内容説明
「秋の日のヴィオロンの」でわが国でも広く読まれたヴェルレーヌは「何よりもまず音楽を」とみずからの叙情を謳った。格調豊かな堀口大学らの名訳から編者による新訳までを網羅、代表的な詩人論を収録。
感想・レビュー
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ロビン
23
「雨の巷に降る如く われの心に涙ふる‥」「秋風のヴィオロンの 節ながき啜泣‥」(堀口大學訳)の詩句で知られた「呪われた詩人」ポール・ヴェルレーヌの詩集。本書では詩の重複を恐れず複数の翻訳者の訳詩が時系列順にまとめられている。妻子のある身でのランボーとの破滅的な関係で知られる詩人だが、詩は詩人の内面の女性性を表したように優美で感傷的であり、翻訳とはいえその豊かな音楽性も伝わってくる。個人的には好きな詩風であり、フランス語の音律が知りたくて原書を取り寄せ、カタコトのフランス語で無理やり音読したことが懐かしい。2020/12/21
月
11
思潮社版ヴェルレーヌ詩集。編者:野村喜和夫氏。訳者:上田敏(海潮音)、永井荷風(珊瑚集)、堀口大学(月下の一群)、金子光晴、橋本一明、窪田般彌、野村喜和夫。重複する詩も結構あり、訳者それぞれの個性や時代を反映していて面白い。ヴェルレーヌと言えば何処か甘く感傷的な詩人、或いはその詩(原語)における音楽性(言葉の響き)を想像するが、その詩篇によっては本詩人らしい陰翳と静寂、陰翳のなかに浮かび上がる対象そのものの存在(感)がその静寂を更に深くしているのが印象深い。 2017/01/20