内容説明
近年、日本各地で野生動物が町に出没し、大きな社会問題となっている。本書は、奈良公園とそう離れていない滋賀県多賀町のニホンジカにスポットをあてる。奈良のシカは観光客のマスコットとして大切にされ、一方は、田畑を荒らす有害獣として駆除され続けている。野生動物の「命」と向き合う現場に立つ人びとの思いとは…。小学校高学年から。
目次
神様の遣いとされた鹿
奈良のシカ
保護施設「鹿苑」
有害獣「ニホンジカ」
駆除の現場
増えすぎたニホンジカ
有害獣を駆除する人たち
鹿の数と自然のバランス
大将の宝物
箱わなにかかった鹿
駆除される鹿は、かわいそうなのか?
著者等紹介
今西乃子[イマニシノリコ]
児童文学作家。公益財団法人日本動物愛護協会理事。特定非営利活動法人動物愛護社会化推進協会常任理事。大阪府岸和田市うまれ。著書『ドッグ・シェルター』(金の星社)で、第36回日本児童文学者協会新人賞を受賞。執筆の傍ら、愛犬・未来をテーマに小・中学校を中心に『命の授業』を展開。その数2020年に240校を超える。著書多数。日本児童文学者協会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆみきーにゃ
80
タイトル読み。今西さんは犬・猫の本ってイメージでしたが動物全般について書いてるんですね。我が家周辺にもニホンジカは生息しており良く遭遇するけども、被害に遭ったことがなかったのでそこまで深刻に考えたことがなかったのでこの本を読み、有害獣の農作物被害が全国的に相当あることを知りただただ可愛いね〜で済まされる問題ではないと痛感した。誰にも見えない境界線。でも現実にある境界線。児童書なので読みやすくわかりやすいのが良い。2022/04/26
☆よいこ
67
子供向けノンフィクション。奈良公園のシカは保護され守られる。一方で滋賀県多賀町のシカは有害獣として駆除対象となる。野生動物の命はどう線引きされ、選択されているのか。前半は、鹿苑の様子や保護活動について。出産は鹿苑で管理され年間200頭ほどの小鹿が生まれる。一方で年間300頭ほどの死亡もある。事故や病死とプラゴミを食べて死ぬしかも多い。後半は、シカ猟・駆除について。猟師さんが豪快。犬がGPSで管理されさぼるとすぐばれるの可笑しい。▽ものごとは一側面だけで見てはいけない。バランスがとれてこそ、命の継続がある。2021/10/15
♡ぷらだ♡お休み中😌🌃💤
58
読み友さんのレビューにひかれて。近年、日本各地で野生動物が街に出没して社会問題になっている。本書は、奈良公園の鹿は人間に保護され、一方滋賀県多賀町の鹿は駆除されるこの対照的なニホンジカに対するかかわり方にスポットをあて、解決すべき問題、考えなければならない課題をあげ「人間と野生動物の共存」を探る。「鹿を有害獣として駆除するのは、もちろん農作物を守り、町民の生活を守るという目的もあるが、林業を守り、野山を守り、この町の本来あるべき姿を守っていくためでもある」という志賀町の町役場の人の言葉が印象に残る。2022/06/03
うー
30
マスコットとして可愛がられる鹿と、有害獣として駆除される鹿。隣県でここまでの差があることに驚く。駆除するのはたんに農作物を守るためだと思っていたが自然環境の破壊を止めるため。鹿達が集落におりてくる理由は人と野生動物の間にあった境界線・里山がなくなったから。駆除の現場や殺処分される描写や写真もあり、とても分かりやすいが目を背けたくなる子もいるだろう。【野生動物と人間はお友だちにはなれない。なってはいけない】無知は罪。簡単に「かわいそう」など言ってはならない。2021/07/24
かめりあうさぎ
18
初読み作者様。児童文学なので文は簡潔で分かりやすいし、考えを押し付けるような物言いがなく読後に自分で考えを巡らせられるような書き口に好感が持てます。奈良の鹿は保護され、お隣の滋賀では害獣として駆除されているニホンジカについて、その境界線はどこにあるのかというおはなし。短絡的に良いか悪いかではなく背景を理解することが大切なんですね。人間と野生動物の緩衝地帯として大切な里山を守る(復活させる)ことは急務だと感じました。駆除した鹿を解体する写真があるのでもしお子さまに読ませるとしても高学年以上が妥当かなと。2024/01/17