内容説明
統合をめざす人文地理学の教科書。ヴィダル・ドゥ・ブラーシュの「地域地理学」から地理情報システム(GIS)まで、20世紀の人文地理学を概観しながら、様々な課題を論じる。
目次
人文地理学のものの見方と「ヴィダルの学統」
第1部 「人間・環境系」とその揺らぎ(自然・環境・人間;地球環境と人間―気候変化と海岸線変化を中心に ほか)
第2部 「空間」から見た地理的世界(科学的探究と空間の世界;立地と空間システム ほか)
第3部 「場所」・「地域」・「世界」(「トポス」と「人間のいる風景」;都市化する世界と地域 ほか)
第4部 人文地理学の今日的課題(情報技術と地理的世界の拡大;グローバル化の世界における「国民国家」 ほか)
著者等紹介
杉浦章介[スギウラノリユキ]
慶応義塾大学経済学部教授(Ph.D.)。専門は経済地理学、都市・地域論、アメリカ研究
松原彰子[マツバラアキコ]
慶応義塾大学経済学部教授(理学博士)。専門は自然地理学、地球環境論
武山政直[タケヤママサナオ]
慶応義塾大学経済学部助教授(Ph.D.)。専門は経済地理学、都市空間分析、都市情報化論
高木勇夫[タカギイサオ]
慶応義塾大学名誉教授(理学博士)・常磐大学学長。専門は地理学、自然環境論、地域政策・計画論
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感想・レビュー
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ラウリスタ~
12
読んだのは7章まで。人文地理学という学問分野の存在すらいまいち理解していなかったので、この教科書はとても勉強になった。1950年以降、それまでの地理学を主観的だと切り捨て、科学的(幾何学的、数学的、計量的)手法で「空間」を分析する流れができる。それに対して、人文学からそこに住む人間を無視した研究に対する反論として「人文主義的地理学」が出てくる(トゥアン、レイ)。空間と場所(人の住処としての場所)の対立は、この対立として理解されることが多いか。19世紀フランスの地理学まで遡り、学問生成史を見せる。文献多数。2021/02/10
坂津
2
人文地理学を学ぶ際に読んでおきたい入門書。フンボルトに始まる近代地理学の歩んできた学史から、発展著しいGISや自然地理学との関わりまで、幅広い内容を網羅している。特に、近代地理学の興りから計量革命、人文主義地理学の流れの把握に最適だろう。概説に留まっている内容について、引用・参考図書リストから掘り下げて調べることができるよう案内があるのも使い勝手が良い。回帰分析や因子分析などの多変量解析の手法や、アンケートやフィールドワークを実施する際の手順については触れられていないため他の書籍を当たる必要があるだろう。2017/04/10