内容説明
近年、教育史研究においても、男性中心の事件史、政権交代史ではなく、女性を含めた視点にたつ民衆史、生活史として、また社会史としてとらえ直そうとする試みがすすんでいる。本書は、それらの動向、とりわけフェミニズムの視点からの先行研究をふまえながらも、さらに越えて、両性の関係性を射程に入れたジェンダーの視点をとることによって、各時代がかかえていた教育史的課題を明らかにしようとした最新の研究成果である。女性と男性という性差をもつ人間が、歴史的にどのように形成され、どのような関係を築いてきたのかを、誕生から死にいたる人間発達のいとなみの側面から具体的に描き出そうとする意欲的な論考によって構成されており、これまで見えなかった歴史の諸相にあらたな光を投げかけている。
目次
第1章 王朝社会の出産とジェンダー
第2章 幕末民間伝承と母性規範―民間伝承と説話文学にみる出産と子育て
第3章 “産む”身体観の歴史的形成
第4章 男社会に参入した女性たち―中学校外国人女教員の場合
第5章 自由学園・「自労自治」の教育とジェンダー―羽仁もと子の「生活」概念をてがかりに
第6章 一九二〇‐三〇年代日本の成人教育としての産児調節運動―奥むめおの活動を中心に
第7章 一九三〇年代の女子青年団と男子青年団―「公共的精神」と「結婚」
第8章 戦歿者寡婦特設教員養成所史―「戦争未亡人」へのまなざしと自立と
第9章 敗戦後日本における「純潔教育」の展開と変遷
第10章 女子特性論教育からジェンダー・エクィティ教育へ
著者等紹介
橋本紀子[ハシモトノリコ]
1945年生れ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。社会学博士。現在、女子栄養大学大学院教授。(教育学・教育史)
逸見勝亮[ヘンミマサアキ]
1943年生れ。北海道大学大学院教育学研究科博士課程を単位取得退学。博士(教育学)。北海道大学教育学部助手などを経て、現在、北海道大学教育学研究科教授
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