内容説明
外国から来たその子、本当に「発達障害」ですか?いま教育現場では、日本語がわからない外国ルーツの子どもが「発達障害」と診断され、特別支援学級に編入されるケースが増えている。本書は、この問題のメカニズムと背景を明らかにし、本格的な「移民時代」を迎えた日本の外国人支援政策の陥穽を問う。
目次
序章 外国人児童の「発達障害」に目を向ける
第1章 日本の外国人児童と「発達障害」の児童
第2章 これまでの外国人児童の「発達障害」
第3章 インタビューの詳細
第4章 カズキくんとケイタくんの7つの場面
第5章 外国人児童が「発達障害」になる過程
第6章 「心理学化」で見えなくなるもの
終章 外国人児童の「発達障害」に見る日本社会
著者等紹介
金春喜[キンチュニ]
1995年東京生まれ。京都大学大学院文学研究科修士課程修了、修士(文学)。専攻は社会学。現在、日本経済新聞社の記者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネギっ子gen
34
教育現場で、日本語が分からない外国ルーツの子どもが「発達障害」と診断され、特別支援学校に進学するケースが増えている。本書は、こうした事例について、フィリピンから来日した2人のきょうだいに関わった保護者や教員たち10人へのインタビューを通し探究した、他に類を見ない貴重な一書。現在、日本経済新聞社の記者である著者の、京都大学大学院の修士論文が下地になっている。修論のテーマに、この事例を選択したのは、強い関心を持っていた「子ども」と「障害」に、自身が成育歴の中で躓きの種になっていた「外国人」を結びつけた、と。⇒2021/11/23
samandabadra
9
外国にルーツを持つ人が抱える教育の問題は複雑だ。そんな子供たちをめぐる10人の関係者の語りの分析から問題をあぶりだした本。当事者の母親や、同じ国出身の方の語り、先生方の語りは「善意でやっているから納得しなければならない」、「生きるためにそうした選択をさせた」という意見に満ち満ちている。これらの言葉の裏から外国にルーツを持つ人々の教育への配慮のなさという社会構造の欠陥を指摘し、その是正が主張される。同時に、教育の失敗を「心理化」させ、全てが個人に帰するように語られることの問題の大きさへの警鐘を鳴らす本。2020/12/03
ボ~
1
非常にさまざまな示唆に富む良書だった。▼子どもたちのために良かれと思ってやっていることが、子どもたちのおかれた不条理な環境を固定化させる手伝いをしていることになる…。さらには、本来必要な支援は何かを見えなくさせてしまう。▼自分のやっていることが正しい、相手のために尽くしている、などと思いあがることのないよう、常に冷静な別の視点を持ち続けなければならないと、気づかされた。2022/02/05
takao
1
ふむ2021/11/26
thugu
1
フィリピンを含め、外国につながりをもつ人々について、本人は大変だろう、と私は思っていた。しかし、彼らの子供が経験する困難にまで想像は及んでいなかった。恥ずかしかった。 読みすすめながら、やりきれないと感じていたが、個人の問題(心の問題)に原因が帰属されることにより、社会的な問題が維持されてしまう、とあう記述にハッとした。2020/03/18