内容説明
江戸時代、馬は将軍から百姓まで多様な身分の人々と寄り添い生きていた。名馬の産地、盛岡藩領の南部馬に注目。武具・農具としての役割や、人馬をとりまく自然環境を読み解き、馬と人の営みから見える江戸社会を描く。
目次
馬と人の江戸時代、そして現在―プロローグ(歴史のなかの動物・人間・自然;人間に寄り添う馬 ほか)
権力者と馬(天下人と馬;将軍の御馬を求めて)
将軍綱吉・吉宗と馬(馬を保護した将軍綱吉;馬を好み活用した将軍吉宗)
身分標識としての馬(男馬・女馬として生きる;「武具」としての馬;「農具」としての馬)
人馬のかかわりと自然環境(馬喰と馬医という存在;馬と牛のいる風景;人馬をとりまく多様な関係;飢饉がもたらした馬肉食)
馬の老いと死(馬の老い・余生・死;死馬の利用)
人馬にみる「共生」の姿―エピローグ(人馬一体の江戸時代;人々の営みと「共生」の姿 ほか)
著者等紹介
兼平賢治[カネヒラケンジ]
1977年、岩手県に生まれる。1999年、岩手大学教育学部卒業。2006年、東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、東海大学文学部専任講師、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoneyama
5
動力エンジンの発明で、数千年続いた馬文化が一挙に消えて無くなってしまった20世紀。つい最近まで連綿と続いた体感的な馬経験を知る世代がまた失われる日も近い。馬で耕し、馬で運び、馬で戦う。循環できる社会を夢見て読んだ。著者は馬産地岩手大の先生。岩手県には馬搬、馬耕を実践する数少ない継承者がいると聞いた。2019/01/05
モルツー
5
評判だった東北馬が廃れてなぜ今は北海道が馬産地のメインなのかずっと疑問だったのだが、この本によってなんとなく納得できた気がする。北海道のアイヌの人達が馬を見て驚いていたというエピソード、松前藩の藩主が親子揃って馬好きだったエピソードなど、とても楽しめた。また、全体を通して動物好きなのだろうと思われる著者の気持ちが現れていてとても読んでいて気持ちの良い本だった。2015/05/06
アメヲトコ
4
「生類」つながりで次は馬の本。南部地域を主として人間と馬との関係を考察した一冊。幕府による馬の仕入れや馬市での売買の様子など、場面が浮かんできそうな具体性に富む事例紹介は読ませます。大飢饉を経験するたびに、もともと毒だと禁忌の対象であった馬肉食がしだいに薬として受容されていく過程は興味深くも悲しい。2016/07/21
いまにえる
3
江戸時代における人と馬の関係を良い・悪いではなく複雑に「共生」しているという視点から描いている。馬は神の乗り物で神聖で高貴であったという思想はヨーロッパの方でも見られ、蹄鉄をお守りとして飾るのもここからきているのかなと思った。東京都府中市はかつて馬の市が開かれ、良質な南部馬や仙台馬が売られていたと知り、府中競馬場があるのもそういった縁でもあるのかなと感慨深い。2017/12/02
あい
2
地元が岩手の元馬産地で、大叔父が馬の医者と馬喰宿をしていたので、とても興味深く読んだ。地元に残る馬や牛の逸話や、いたるところにある馬頭観音やお蒼前さまの石碑など、これから興味深く見ることができそうだ。2020/06/22