内容説明
新しい知と「科学」の冒険へと繰り出した十八世紀ヨーロッパの啓蒙主義は、一国の歴史のなかではなく、ヨーロッパという一つのコスモスの思潮として考えなければならない。そうであるならば、「啓蒙のヨーロッパ」は、自分たちの「外の世界」をどのようにとらえていたのだろうか。非ヨーロッパ世界を照らし出す啓蒙の光を軸に、植民地主義や帝国主義の源泉ともなった当時の文明観を批判的に論じたい。
目次
外の世界を照らし出す啓蒙の光
1 啓蒙とは何か
2 広がりつつある世界
3 非ヨーロッパ世界のイメージ
4 科学の光
5 「人種」・ジェンダー・文明観
著者等紹介
弓削尚子[ユゲナオコ]
1968年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。人文科学博士。専攻、ドイツ史、女性史、ジェンダー史。現在、早稲田大学法学部助教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まいこ
17
それまで知識は教会が独占していてキリスト教の世界観で生きてきたのが、新大陸を「発見」したり中国やエジプトの古さを知るにつれて、アダムとイブの子孫ではない人々や大洪水の前からいた人々を知り、比較し対象化して見るようになったし科学的な視点を持つようになった。外を知らなければ近代化って起きないままだったんだろうか。教会を離れて、コーヒーハウスや読書会で知が共有され民主化されていった話は、それの現代版がネットだと思った。2021/09/13
nranjen
3
図書館本。非常にわかりやすくジェンダー、人種の観点を踏まえまとめられている。2019/09/04
カラス
1
リブレットらしい非常にスマートな一冊。当時のヨーロッパ人の文明感にだけ焦点を絞って書いてあるのでとても読みやすい。文明観とは要するに価値観であり、啓蒙の世紀が植民地主義の時代にスムーズに繋がってゆくのがよくわかる。いままで、「啓蒙」という言葉にどこか胡散臭さを感じていたが、その直感は正しかったのだなと思った。なぜなら、啓蒙と差別は相反するものではなく紙一重でもなく表裏一体だからだ。啓蒙的で科学的な世界観がごく自然に「他者」に対する差別に繋がってしまうのがよくわかる。なかなかの良書。2018/01/27
さんとのれ
1
啓蒙主義そのものについてではなく、それが広まった時代の情勢と価値観についての本。植民地経済に支えられながら啓蒙思想を語る混沌とした時代に現れた白人男性至上主義の傲慢さは、聖書の解釈が崩れゆく時代に必死に己の優位性を保とうとする悪あがきともいえる。100ページにも満たない本だけど、要点がコンパクトにまとまっててなかなか良かった。2014/06/05
usoki
1
啓蒙の世紀から植民地主義へのスムーズな移行。そこには何のパラドックスもなかった。2010/11/23