内容説明
「民族の悲劇」はなぜ、バルカンで生じるのであろうか。凄惨なボスニア内戦を見るにつけ、だれしもが感じた疑問であろう。バルカンは「ヨーロッパの火薬庫」と称さて以来、「紛争地域」「危険地域」とのイメージがつきまっている。バルカンの民族主義を近現代史のなかで検討し、この地域の諸民族の対立の背景を探ると同時に、諸民族が協力しようと模索した側面にも光を当てて、民族主義からの脱却の展望を考える。
目次
バルカンは「ヨーロッパの火薬庫」か
1 バルカンという地域
2 民族主義の台頭
3 さまざまな民族問題
4 バルカン地域協力の可能性
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
8
なかなか複雑だが、近現代世界史を学ぶには不可欠なバルカン史。セルビアがなぜ民族運動の中心になったかがわかって良かった。オスマン支配下から、WWⅠを経て、ユーゴスラビアの建国と崩壊、そして現在かかえる諸問題が書かれている。2018/07/08
YS-56
4
寛容と共存。これがいかに難しいかがバルカンの民族主義なのでしょうか。歴史は常に学びを提供してくれています。2022/05/09
Takao
2
1996年4月25日(2008年9月25日、11刷)。著者の『ユーゴスラヴィア現代史』(1996、岩波新書)を読んで、ユーゴスラビアは長い間、民族、宗教、言語などを異にしながら「共存」してきたことがとても印象に残っている。本書はバルカン全体を対象としているため、諸民族の歴史などの部分はとても難しかった。最後の「バルカン地域協力の可能性」で書かれていたサラエボの話が印象に残った。サラエボで育まれた寛容と共存の伝統を復活させるには長い時間がかかるだろうが、それなしには真の平和はなく、それは可能なことである。 2017/03/09
ちあき
0
〈世界史リブレット〉シリーズ初回配本分2冊のうちの1 冊。そのせいかどうかはわからないが、民族問題総ざらえ的な章がもうけられていて印象が散漫になってしまっている。「ナショナリズムの思想史」のような内容を期待していたのでやや落胆。反オスマン蜂起にいたるセルビア社会の記述は非常におもしろい。2010/03/04
rbyawa
0
少し遠くの図書館に行ったら東欧・ロシアの棚だけが充実していて、「東欧」で探していたのがどうも見当違いだったらしいことに気付く。東欧というのは旧ソ連構成国と周辺社会主義陣営(確かに統一性がない)、バルカンというのは大雑把にかつて東ローマ・ビザンツ帝国下、のちにトルコに支配されていた地域でとりあえずオスマン帝国下にあったギリシャは含まないらしいが確かに共通点はある。民族の揺籃の地、紛争の火種、ヨーロッパで最初に生まれ、最後にヨーロッパに加わった国々、まあ、どれも一面でしかないんだよね。2009/12/29