出版社内容情報
人類は太り続けてきた。肥満人口は1980年から倍増し、肥満を含む過剰体重者の割合は1位のクック諸島で81%、ファストフード大国アメリカで72%に上る(WHOのデータ)。肥満自体は新しい現象ではないが、これほどの流行は近年の事象である。
種としての誕生以来、人類は食物獲得のためによく身体を動かし、あり余る食物に恵まれることが稀な環境で数十万年を生き延びた。生存のための適応は、当然エネルギー摂取効率を高める方向に働いた。現代になって初めて、高カロリー食が市場に溢れ、身体活動は余暇のスポーツという贅沢に変わったが、身体は過去の進化の刻印をとどめている。エネルギーの過剰蓄積への歯止めが弱い体で、人類は飽食の時代を迎えたのである。進化の過程で大型化した脳を支えたのが脂肪だったこと、脳の発達のために赤子が脂肪を豊富に蓄えて生まれてくることも、太りやすさの背景にある。
本書は人の肥満に進化生物学的アプローチを中心に迫った先駆的な仕事。代謝、内分泌、熱力学、遺伝、エピジェネティクスに及ぶ膨大な知識を集約し、複雑に相関する人体の生理を解き明かした。肥満は様々なリスク要因となるが、脂肪は人に必須である。病気への抵抗や女性の生殖に利益をもたらす。過度の痩身は逆に不健康を招く。カロリーや血糖値ばかり気にすることも、バランスを崩す可能性がある。どうしたら健康でいられるのか。近道はないが、確実な道へのヒントを本書は示している。
内容説明
世界中で増加する肥満。背景には進化的適応がある。太る仕組みを知ることで分かる真の健康。それを手に入れるには?近道はないが、確実な道のヒントがここに。
目次
はじめに―ヒューマンバイオロジー、進化、肥満
肥満への道
私たちの遠い昔の祖先
食事の進化
進化、適応、ヒトの肥満
進化、適応、現代の試練
エネルギー、代謝、生命の熱力学
情報分子とペプチド革命
食欲と飽満
食べるための準備を整える〔ほか〕
著者等紹介
パワー,マイケル・L.[パワー,マイケルL.] [Power,Michael L.]
アメリカ産科婦人科学会上級研究員。スミソニアン国立動物園所属動物科学者
シュルキン,ジェイ[シュルキン,ジェイ] [Schulkin,Jay]
アメリカ産科婦人科学会研究部長。ワシントン大学産科婦人科学部客員教授。ジョージタウン大学神経科学学部特任教授
山本太郎[ヤマモトタロウ]
長崎大学熱帯医学研究所・国際保健分野主任教授。1990年長崎大学医学部卒業。長崎大学大学院博士課程病理学系専攻修了(博士医学)。東京大学大学院医学系研究科博士課程国際保健学専攻修了(博士国際保健学)。京都大学、ハーヴァード大学、コーネル大学、および外務省勤務等を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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犬養三千代
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