クローン人間の倫理

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  • サイズ B6判/ページ数 233,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622070269
  • NDC分類 490.15
  • Cコード C1010

出版社内容情報

1996年7月のクローン羊ドリーの誕生から6年、2002年末には、ついに「クローン人間誕生」というニュースが流れた。事の真偽はともかく、いまやわれわれは、人類初のクローン人間を受け入れるか否かの選択を迫られているといっても過言ではない。

体細胞核移植によるクローン技術の成功が意味するものは、きわめて大きい。それによって、生殖細胞(精子と卵子)以外の、体の一部の細胞や冷凍保存された細胞からでも、もとの個体と同じDNAをもつ新しい個体を再生することが可能になったからである。クローン人間の是非を問うことは、人間や生命の本質を問うことにひとしい。こうした問題を考えるためには、技術、宗教、医療、法律などさまざまな論点が拠って立つ原理をあきらかにし、そこから判断の理由を明確に示さなくてはならない。

気鋭の哲学者/倫理学者である著者はまず、「クローン人間」というイメージが人びとに与える不安から説きおこし、遺伝子同一性と人格同一性を区別し、「人間の尊厳」の、歴史的、宗教的、哲学的に錯綜した意味を解きほぐす。そして、現代の生命倫理学(バイオエシックス)の二つの理論的支柱である、功利主義の原則と自己決定権の吟味をつうじて、クローン人間の賛成論と反対論が、ともにあわせもつ誤謬と危うさをあぶり出す。生命倫理の真価を問う問題作である。

上村芳郎(うえむら・よしろう)
1956年、熊本県生まれ。1981年、東京外国語大学卒。1988年、東京大学大学院博士課程(哲学)満期退学。現在、東京理科大および千葉工大非常勤講師。専門は、ヘーゲルを中心としたドイツ哲学と倫理学。論文に、「超越論的直観について」(東京大学文学部哲学研究室編『論集III』1984年)、「心の魔術的関係--動物磁気・狂気・身体」(加藤尚武編『ヘーゲル読本』法政大学出版局、1987年)、「ヘーゲル『精神哲学』における言語と意味」(日本哲学会編『近代哲学論叢』「哲学雑誌」第104巻776号、有斐閣、1989年)、加藤尚武他編『ヘーゲル事典』(項目執筆、弘文堂、1992年)、「愛と結婚――ヘーゲル『法の哲学』を中心に」(「東京文化短期大学紀要」第13号、1995年)、「三十七分でわかるドイツ思想史講座」(「楽園天国」第3号、双葉社、1999年)、「良心論」(「東京文化短期大学紀要」第18号、2001年)などがある。


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関連書:
レネー・C.フォックス『生命倫理をみつめて―医療社会学者の半世紀』
G. E. ペンス『医療倫理 1―よりよい決定のための事例分析』
G. E. ペンス『医療倫理 2―よりよい決定のための事例分析』
R. フェイドン/T. ビーチャム『インフォームド・コンセント―患者の選択』
G. R. テイラー『人間に未来はあるか――生命操作の時代への警告』

内容説明

人類初のクローン人間誕生をまえにして人間の尊厳とは何か。生命倫理の議論を掘り下げ、クローン人間賛成論と反対論がともに拠って立つ原理を問いなおす。

目次

1 クローン人間に関する誤解―予備考察(手塚治虫からドリーへ;遺伝子決定論の批判―一卵性双生児とクローン人間 ほか)
2 クローン人間の現状(生殖医療の歴史―クローン技術の前史;クローン技術(体細胞核移植)の現在 ほか)
3 クローン人間の倫理学(倫理学説;倫理の原点―「絶対的なもの」の規定 ほか)
4 クローン人間の是非―クローン人間の具体論(優生思想の排除とクローン人間の可能性;具体例の検討 ほか)

著者等紹介

上村芳郎[ウエムラヨシロウ]
1956年、熊本県生まれ。1981年、東京外国語大学卒。1988年、東京大学大学院博士課程(哲学)満期退学。現在、東京理科大および千葉工大非常勤講師。専門は、ヘーゲルを中心としたドイツ哲学と倫理学
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感想・レビュー

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redbaron

9
少し古い本ですが、クローン人間…というより人間とはなあに?と考えさせられるわ。一卵性双生児がOKならクローン人間だってOKだよね。生をもてあそぶ技術なのか、幸せを考える技術なのか。個人が必要とするのか、国家が必要とするのか。あたしは、部分的には賛成だけどね。2015/09/30

ブルーローズ

0
山崎氏の評論とちょっとかぶる部分があり。このころには共通認識だったのか。常識的。2010/06/16

ぴょんpyon

0
クローン羊ドリーが誕生したことをきっかけに、クローン人間に関する議論が活発におこなわれてきました。本書はクローンとして生まれる「人間」が現実問題としてどんな存在であるか、また、人間をクローン化することで生じる倫理的な問題を扱っています。人間の尊厳といった難しい話題にも言及していて読むのはなかなか苦労しますが、関連する倫理的話題を体系立ててまとめている良書です。2003年初版と古い本ではあるけれども、議論の内容はいまでも通用するし、とても価値があると思います。2018/05/20

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