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アーレント政治思想集成〈1〉組織的な罪と普遍的な責任

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  • サイズ A5判/ページ数 285p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784622070122
  • NDC分類 311.234
  • Cコード C3031

出版社内容情報

〈かつてヒュームは、人間の全文明は「蚕や蝶がそうであるような、一つの世代がその段階をいっせいに過ぎ去ってこれとは別の世代がそのあとに続くなどということはない」という事実に立脚していると述べた。けれども、歴史の分岐点においては、言いかえれば危機の高まりにおいては、蚕や蝶のそれに似た運命に人間の一世代が見舞われることもあるかもしれない。というのも、旧いものの衰退、そして新しいものの誕生は、連続性に結びついた事柄であるとはかぎらないからである。世代と世代の間、何らかの理由でまだ旧いものに属している人びとと、破局を文字通り膚で感じていたりすでに破局とともに成長した人びととの間では、鎖は断ち切られ、「虚ろな空間」、いわば歴史上の誰のものでもない土地が浮かび上がってくるが、これを言い表わすには「もはやなく、そしてまだない」という言葉しかないだろう。ヨーロッパではこのような連続性の絶対的な中断は第一次世界大戦のさなかに、そして戦後に起きた。〉

(〈もはやない〉と〈まだない〉)

このように、ハンナ・アーレントの思考は、大戦間期という虚ろな空間で、まずは培われた。その後、ナチズムの席巻するドイツからパリをへてニューヨークに亡命し、その地で「アウシュヴィッツ」の事実に接することで、絶望をくぐりぬけた著者の世界に対する見方は、徐々に確固たるものになってゆく。

20世紀を具現した思想家の前半生(1930-54)の思考の全貌を、全2巻で公刊。本巻には、不朽の論考「実存哲学とは何か」をはじめ22篇を収録する。


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Hannnah Arendt(ハンナ・アーレント)
1906年、ドイツのハノーファー近郊リンデンでユダヤ系の家庭に生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。1928年、ヤスパースのもとで「アウグスティヌスの愛の概念」によって学位取得。ナチ政権成立後(1933)パリに亡命し、亡命ユダヤ人救出活動に従事する。1941年、アメリカに亡命。1951年、市民権取得。その後、バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の教授・客員教授などを歴任、1967年、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチの哲学教授に任命される。1975年ニューヨークで急逝。著書『アウグスティヌスの愛の概念』(1928,みすず書房2002)『全体主義の起原』1-3(1951,みすず書房1972, 1972, 1974)『人間の条件』(1958,筑摩書房1994)『ラーエル・ファルンハーゲン』(1959,みすず書房1999)『イェルサレムのアイヒマン』(1963,みすず書房1969)『革命について』(1963, 筑摩書房1995)『暗い時代の人々』(1968,河出書房新社1972)『過去と未来の間』(1968,みすず書房1994)『暴力について――共和国の危機』(1969,みすず書房2000)『精神の生活』上下(1978,岩波書店1994)他。

Jerome Kohn(ジェローム・コーン)編
1931年に生まれる。現在 ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチのハンナ・アーレント・センター所長。共編著に『ハンナ・アーレント――20年後』(1996)などがある。

訳者:
齋藤純一(さいとう・じゅんいち)
1958年に生まれる。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得。 現在 横浜国立大学教授。 著書『公共性』(岩波書店、 2000)、 『親密圏のポリティクス』(編著、 ナカニシヤ出版、 2002)。 訳書 アーレント『過去と未来の間』(共訳、 みすず書房、 1994)コノリー『アイデンティティ/差異』(共訳、 岩波書店、 1998)ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』(共訳、 岩波書店、 2000)。

山田正行(やまだ・まさゆき)
1957年に生まれる。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。政治思想専攻。現在 東海大学助教授。著書『西洋政治思想史II』(共著、新評論、1995)。訳書 アーレント『暴力について――共和国の危機』(みすず書房、2000)ハーバーマス『公共性の構造転換』(共訳、未来社、1994)。

矢野久美子(やの・くみこ)
1964年に生まれる。東京外国語大学大学院博士後期課程修了。学術博士。現在 フェリス女学院大学国際交流学部助教授。思想史専攻。著書『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思考の場所』(みすず書房、2002)。

内容説明

ハンナ・アーレントの思考は、大戦間期という虚ろな空間で、まずは培われた。その後、ナチズムの席巻するドイツからパリをへてニューヨークに亡命し、その地で「アウシュヴィッツ」の事実に接することで、絶望をくぐりぬけた著者の世界に対する見方は、徐々に確固たるものになってゆく。20世紀を具現した思想家の前半生(1930‐54)の思考の全貌を、全2巻で公刊。本巻には、不朽の論考「実存哲学とは何か」をはじめ22篇を収録する。

目次

「何が残った?母語が残った」―ギュンター・ガウスとの対話
アウグスティヌスとプロテスタンティズム
哲学と社会学
セーレン・キルケゴール
フリードリヒ・フォン・ゲイツ―没後百周年の、一九三二年六月九日に
ベルリンのサロン
女性解放について
フランツ・カフカ再評価―没後二〇周年に
外国語新聞における国外事情
「ドイツ問題」へのアプローチ〔ほか〕

著者等紹介

アーレント,ハンナ[アーレント,ハンナ][Arendt,Hannah]
1906‐1975。1906年、ドイツのハノーファー近郊リンデンでユダヤ系の家庭に生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。1928年、ヤスパースのもとで「アウグスティヌスの愛の概念」によって学位取得。ナチ政権成立後(1933)パリに亡命し、亡命ユダヤ人救出活動に従事する。1941年、アメリカに亡命。1951年、市民権取得。その後、バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の教授・客員教授などを歴任、1967年、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチの哲学教授に任命される。1975年ニューヨークで急逝

コーン,J.[コーン,J.][Kohn,Jerome]
1931年に生まれる。現在、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチのハンナ・アーレント・センター所長

斎藤純一[サイトウジュンイチ]
1958年に生まれる。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得。現在、横浜国立大学教授

山田正行[ヤマダマサユキ]
1957年に生まれる。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得。政治思想専攻。現在、東海大学助教授

矢野久美子[ヤノクミコ]
1964年に生まれる。東京外国語大学大学院博士後期課程修了。学術博士。現在、フェリス女学院大学国際交流学部助教授。思想史専攻
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

chanvesa

12
内容も哲学・文学・政治(アイヒマン裁判に関係する「悪」のことも)と多岐にわたるが、短い論文・エッセイの集まりで、アーレントの研究者やよく知っている人には興味深いかもしれないが、アフォリズムのちょっと長いぐらいのボリュームなので、却って難しい。「実存哲学とは何か」は現象学が実存哲学とつながることが少しわかる。アーレントを読むのに、カントの『判断力批判』、それからハイデガーをかじっていないと時折読んでいて理解が苦しくなることを、この本で強く感じた。2014/07/19

2
ジェローム・コーンによって編集された“Essay in Understanding 1930-1954”の和訳の前半。当時のアメリカ政治に対する分析など興味深い。後の著作、特に「全体主義の起源」につながる論稿が(当然といえば当然だが)多い。「女性の解放について」と「実存哲学とは何か」のハイデガーのところは難しくてよくわからなかった。再読したい。2017/08/26

pushuca

1
行き詰まるような論考の連続。特に「実存哲学とは何か」が圧倒された。2024/04/10

アラミス

0
[★★★★★]]第二次世界大戦中にアメリカへ亡命し政治(哲学)の教授になり、戦時中戦後に行われたユダヤ人への悲劇に対して ユダヤ人でありながら事実を客観的論理的に 彼女の言うところの「私は理解しなければならない」 このスタンスで世情に流されない結論を導き出す 非常に心に落ちる論理と結論で、モヤモヤした思いを言葉にしてくれている1冊2021/01/29

jackbdc

0
アーレントは初。何年も前から興味はあったので。本書をきっかけに関心を強めたが、著作は難しそうなので後回し。もう少し哲学のリテラシーをつけてからチャレンジします。先ずは映画を見た。たぐいまれな芯の強さ、頑固すぎると思われるほどの強い信念を持ちえたのは何故だろうか?思想より人格に興味を持ってしまった。2020/09/12

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