出版社内容情報
昭和38年。海に閉ざされた炭坑の島で不審な死を遂げた少女。若き警察官・荒巻の前に、隠されてきた島の禁忌がたちはだかる。あばかれてゆく人々の過去、動き出す殺人者、空前のスケールの「密室」で、前代未聞の捜査がはじまった!
内容説明
海に浮かぶ「密室」殺人者はここにいる。昭和34年。満月の夜に不審な死を遂げた少女。若き警察官が追うものは殺人鬼の“幻影”か。わずかな土地に五千人がひしめく炭坑の島。少女の事故死を疑う若き警察官・荒巻の“許されざる捜査”は、しきたりや掟に支配された島に波紋を広げていく。警察の正義は守られるのか。次の満月―殺人者はふたたび動き出すのか。
著者等紹介
大沢在昌[オオサワアリマサ]
1956年、名古屋市生まれ。79年「感傷の街角」で第一回小説推理新人賞を受賞しデビュー。91年「新宿鮫」で第12回吉川英治文学新人賞と第44回日本推理作家協会賞長編部門を受賞。94年『無間人形 新宿鮫4』で第110回直木賞。2001年『心では重すぎる』、02年『闇先案内人』で日本冒険小説大賞、04年『パンドラ・アイランド』で第17回柴田練三郎賞、10年、日本ミステリー大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ユザキ部長
111
特殊に閉塞された土地。沢山の目。何をやっても目立つし、何事も隠せない環境下で暗躍する。追う刑事は終始、自問自答。わずかな気づきから事件を探す。少数の中でも集団だとイジメが必ずあるのが印象的。2017/07/16
あすなろ
105
一島一家族を標榜するN島。まごうかたなき軍艦島だ。僕が軍艦島の存在を知ったのは五年程前。大沢氏は、この作品の描写は架空とあとがきに記しているので、島民感情については言及しまい。しかし当時、世界一人口密度が高かった軍艦島は、我々が想像つかない特殊な世界だったろう。この知的好奇心を満たすのに十分な作品。十数年振りに読んだ大沢氏作品で550頁以上に及ぶ長編も軍艦島の全てではなかろう。赴任してきた巡査と赴任数年の巡査を通じ、特殊さをよく理解出来た。ゆりのきさん.ジキルさん。読んで良かった作品でした。2015/02/22
ままこ
98
昭和34年の軍艦島を舞台にしたミステリ。全盛期の軍艦島の様子が描かれていて興味深かった。少女の事故死に疑問を持った実直な新米巡査が孤軍奮闘しながら事件を粘り強く追っていく。登場人物が多いので覚えるのに大変だった。深みのある人間描写。わだかまり。それぞれの思惑。ミスリード。解決後も全てがすっきりしないところがリアル。プロローグとエピローグから荒巻の変わらぬ信念と自戒の念が伺えた。読み応えのある作品だった。2019/08/13
おくちゃん🌸柳緑花紅
97
昨年5月に軍艦島を訪れた際ガイドさんの説明と見学を許された島のごく一部(見学通路)を思返しながら読了。著者あとがきで想像の産物で架空のものと述べている。一島一家族。いつでも誰かの視線があり、特殊な場所で生きていかなければならない、それぞれの事情。先輩岩本巡査と主人公荒巻との生き方の対比は自分自身の生き方を考えさせられる。大正5年に日本に鉄筋高層アパートが建てられ、住民の多くはテレビや冷蔵庫も持っていた。ただ身分の差で住環境はかなりの差が。そんな島で満月の夜・・・2015/03/17
タックン
94
巻頭と巻末の写真見て気が重くなってなかなか読み始められなかった。読んでみるとやはり始めは事件より島特有の閉鎖社会・階層社会の話にページが割かれていて読むのが大変だった。しかしうちの会社(工場)の下請けの派遣さんのことを思い描いたらわかってきたかな。 後半は新人警察官の捜査を軸に犯人は誰・誰?っていう思いで一気読みしちゃった。真犯人は以外だったけど容疑者はやっぱって思ったな。満月の夜の使い方が上手かった。また読み終えると題名が秀逸。やっぱ大沢さんはさすがだな。2013/12/16