内容説明
教育を植民地への「恩恵」とみなすアメリカの歴史認識は錯綜する評価のなかで残存しつづけた。アメリカ植民地期フィリピンにおける教育の理念と矛盾を検証し、近代植民地主義とその遺制を問い直す。
目次
序章 アメリカ植民地期フィリピンと植民地教育を問い直す
第1章 アメリカ植民地主義と言語
第2章 制度としての「恩恵」
第3章 アメリカ人教員とフィリピン人教員
第4章 フィリピン人教員層と市民教育
第5章 抗争する歴史―植民地の地理・歴史教育
第6章 フィリピン学校ストライキ論
第7章 反フィリピン人暴動とその帰結
終章 植民地主義は継続しているか―二一世紀のフィリピン社会とフィリピン人
著者等紹介
岡田泰平[オカダタイヘイ]
1971年生まれ。一橋大学大学院言語社会研究科博士課程修了。現在、静岡大学大学院情報学研究科講師。フィリピン史、アメリカ史、近代植民地主義研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くまパワー
2
岡田先生の博士論文で、原題は『関係性の歴史学にむけて』。これを読むとやはり分析の流れは極めてすごいと思う。制度史ー史学史ー心性史という順番で、アメリカが作り上げた近代的植民地教育制度を分析し、アメリカとフィリピン教員の回想録に基づき越境の体験と教育実践を読み解き、そして学校ストライキを例として植民地教育の恩恵の論理と現実の矛盾を指摘した。フィリピン「植民地的近代」の根底には植民地教育の問題を明らかにし、大量の資料を駆使してその複雑な様相を見事に描き切った。546頁の博論やはりすごいし、大変勉強なりました。2022/10/10