内容説明
パリ国立古文書館などに眠る原資料を発掘して、音楽“展示”という概念の形成と展開を5回にわたるパリ万博に追う。ベルリオーズ、ビゼー、サン=サーンスらの音楽家たちに加え、政治家や役人、オルガン製造業者も登場して織りなす19世紀フランス音楽界のドラマ。
目次
序章 Prelude
第1章 音楽フェスティヴァルの開催 一八五五年
第2章 音楽展の始まり 一八六七年
第3章 理想の音楽展をめざして 一八七八年
第4章 政治的思惑 一八八九年
第5章 伝統化と未来に続く道 一九〇〇年
結び Postlude
著者等紹介
井上さつき[イノウエサツキ]
1978年東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。同大学院修士課程を経て博士課程満期退学。論文博士(音楽学)。修士課程在学中にフランス留学。パリ・ソルボンヌ大学修士課程修了。現在、愛知県立芸術大学音楽学部教授。専門は近代フランス音楽史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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寧々子
7
エッフェル塔が展示された1889年の万博に関心があった。19世紀半ばから20世紀初頭にかけて開催されたパリ万博。その中でもとくに、音楽面に関して触れているのが本書だ。産業中心だったイギリス万博との差別化をはかるために、パリ万博では芸術の展示に力が注がれ、『時間芸術』(この言葉の響きが妙に気に入ってしまった)である音楽までもをエクスポゼするに至った。日本人である私は万博と聞けば、大阪万博のモニュメントを思い浮かべる。それなのにパリでは音楽! お国柄の違いを思いながら、面白く読んだ。2009/07/03
メルセ・ひすい
3
ベルリオーズなどの音楽家、政治家や役人、オルガン製造業者らが織り成した19世紀フランス音楽界のドラマとは。音楽“展示”という概念の形成と展開を、パリ国立古文書館の原資料などを元に、5回にわたるパリ万博に追う。2009/06/17
hika
1
徹底した一次史料の分析によって、パリ万博における「音楽展示」を明らかにした良著。展示の選定や実務についての博覧会行政側と音楽家集団側(アカデミー)の対立や妥協。博覧会の政治的位置づけ。イギリスの産業博覧会の思想とは異なる、サン=シモン主義に基づく展示思想。等々文化の分析を通じて政治社会のありように迫る文化史研究のおもしろさが表れている。2009/05/26