内容説明
医療の歴史が内包する大きなジレンマ。医学・医療の進歩、人類の福祉の名のもとに被験者とされた学用患者は、いつ、どのようにして生まれ。教育研究体制のなかに位置づけられたのか。近代日本の医学教育および病院医療システムの構築過程をたどり、医療環境の変化を追う。
目次
第1章 臨床医学と実験医学の統合(近代医学の成り立ちとその課題;学用患者を研究「材料」から研究協力者に転化させる装置;歴史にみる臨床重視の伝統と基礎医学研究の萌芽;免責される医療過誤)
第2章 近代医学教育体制の構築(解剖用屍体の確保;系統解剖および病体(病理)解剖の実地演習
全国的に高まった病体(病理)解剖の機運
屍体の所有権)
第3章 医学校と病院の再編(解剖用屍体の不足と経費減額に悩む医学校の統廃合;娼妓・貸座敷業者への賦金と病院の開設;私立病院増加の背景と世評;往診医に支えられた大正・昭和初期の在村医療;告知)
第4章 求められる施療 拒否される施療(貧民への施療を押しつけ合う官公立病院と開業医;行倒れ・乞食の救療と放逐にあたった巡査;公立病院を施療病院化することの是非;慈善事業から社会政策の時代へ;明治の医師の職業倫理)
第5章 学用患者の誕生(医学教育・研究「材料」として扱われた学用患者;学用患者システムを変えた公害・薬害患者)
著者等紹介
新村拓[シンムラタク]
1946年静岡県生。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士(早大)。京都府立医科大学教授、北里大学教授・副学長を経て、北里大学名誉教授。専攻、日本医療社会史。著書に、『古代医療官人制の研究』(1983年)、『日本医療社会史の研究』(85年)、『死と病と看護の社会史』(89年)、『老いと看取りの社会史』(91年)―以上の4書にてサントリー学芸賞を受賞(92年)。『日本仏教の医療史』(13年、矢数医史学賞を受賞。法政大学出版局)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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