内容説明
自治の原点は一揆であり、一揆の母体は産土神(鎮守)祭礼の中にある。祭礼に関わる人々の意識的深層は祖霊観念や弥勒信仰に象徴される再生観念・救済観念の中にある。このような観念に基づく祭礼や一揆の集合心性が意識的基層となって、地域社会の秩序のみならず、国制の秩序をも制約する自治秩序は生み出された。本書は、こうした視座から江戸時代、町や村あるいは郷や郷の連合体としての「領」を基礎に独自の自治秩序を創出した百姓身分・町人身分の人々の自治文化について論じ、この中に市民的自治の源流を探る。
目次
第1編 江戸幕府の地域社会編成と自治秩序(近世初期の国制と「領」域支配―「徳川政権」関八州支配の成立過程を中心に;三田領の成立と地域秩序―奥多摩地域における戦国時代から近世初期の支配をめぐって;割本制と郷村の自治秩序―寛文・元禄期における武蔵国多摩郡三田領吉野家の管轄地域を素材として;家綱政権の織物統制と木綿改判制度の成立―関東および関東近国の商品流通と幕藩関係)
第2編 一揆の正当性観念と役による秩序(都市日光の神役と町役人制度―稲荷町の町政運営の変動を中心として;都市日光の曲物職仲間と地域秩序―江戸時代後期における門前町の林業・手工業と地域経済について;一揆の正当性観念と役による秩序―安永七年五月における都市日光の惣町一揆を中心として)
第3編 祭礼の集合心性と一揆の秩序(一揆・騒動と祭礼―近世後期から幕末期の神による相互救済・正当性観念と儀礼・共同体について;祭と一揆―明和八年四月における水戸藩鋳銭座の打ち毀しと磯出祭を中心に;一揆・祭礼の集合心性と秩序―百姓一揆絵巻「ゆめのうきはし」を素材として;富士信仰儀礼と江戸幕府の富士講取締令―呪医的宗教儀礼としての江戸市中への勧進と身分制的社会秩序の動揺をめぐって)
著者等紹介
澤登寛聡[サワトヒロサト]
1952年、千葉県夷隅郡夷隅町(いすみ市)に生まれる。法政大学大学院人文科学研究科日本史学専攻博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。現在、法政大学文学部教授、法政大学国際日本学研究所兼担所員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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