内容説明
9世紀末から10世紀にかけて、律令時代とは異なる情報環境下におかれるに至った平安王朝の天皇・貴族らは、政務や儀式を執り行う上で必要な情報を収集・蓄積するために、日記を記し始めた。かかる「公事情報」の装置として、やがて「家」の日記、「日記の家」が生み出され、「家記のネットワーク」も形成される。藤原定家『明月記』にみる公事への関心と認識、説話作家たちによる日記の利用、日記や文書の移動と戦火からの避難に用いられた「文車」の考察なども含め、「情報史」の視点から、王朝日記の発生・変質・衰退の過程、その機能と意義を追究する。
目次
プロローグ 燃える日記
第1章 王朝日記の“発生”
第2章 王朝日記の展開―王朝日記の第二段階
第3章 文車考
第4章 小野宮家記事件をめぐって―院政期の小野宮流
第5章 藤原定家と王朝日記
第6章 説話作家と王朝日記
第7章 出家と日記の終わり
終章 王朝日記の黄昏
著者等紹介
松薗斉[マツゾノヒトシ]
1958年東京生まれ。1981年九州大学文学部国史学科卒業、1988年九州大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学、同年文学部助手、1991年愛知学院大学文学部歴史学科専任講師。現在、同教授。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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akuragitatata
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日記の家に続く、王朝日記研究の一冊。つまり儀式儀礼的な記述が一三世紀以降急速になくなっていく事を指摘しているのが貴重で、日記が朝廷文化の変容を端的にあらわしている。文車については初めて知った。たまに出てくるけど移動式書架だったんだね。明月記や、宝物集などにかんする論考は文学研究者もちゃんと読むべき。ただ、日記から次第書へ分割されるケースについては触れられておらず、日記の変容は次第書の多種化とも関連するのではないかと思われる。この辺りの研究も近年盛んになされている。2017/06/06