内容説明
都市には、昼の顔と夜の顔がある。都市に生きる直立歩行人にも、昼の歩行と夜の歩行がある。昼の生活圏を歩いた散歩人は、宵闇にまぎれ、“流通”の豊饒なる夜と溶融するとき、事件蒐集家たる“遊歩者”へと変容する。夜の都市は事件‐空間として、その豊饒に陶酔し、「来て‐寄って‐去る」遊歩者の都市的実存の偶有性と共振する。彼が遭遇し判断する“事件”の現象学が、非日常性の歩行に内在する、都市住民の本源的自由を照らし出す。遠大なる記号論的都市文明論―『散歩の文化学』姉妹編。
目次
“事件”とは何か
第1部 “事件”の儀礼的祖型(“事件”判断の類型学;“歳時記”システムによる都市的偶有性の規範時空化;“事件”と平安物語;“事件”主体としての物の怪)
第2部 古代的定位類型への遡行(“事件”と運命;ポリス的実存の根源―“集住”によるタブラ・ラサ化;“集住”と“遺棄”―悲劇の原風景;“運命”的主体の系譜)
都市的定位の原風景としての“遊歩的覚醒”
著者等紹介
前野佳彦[マエノヨシヒコ]
1953年福岡県生まれ。74年東京大学法学部中退、79年同大学院人文科学研究科修士課程修了、80~84年シュトゥットガルト大学・ロンドン大学付属ワールブルク研究所に留学。84年シュトゥットガルト大学哲学部博士学位(Dr.phil.)取得。現在、“文化記号塾”主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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