目次
第1章 始原のあふれる社会
第2章 家族制生産様式―過少生産構造
第3章 家族制生産様式―生産の強化
第4章 贈与の霊
第5章 未開交換の社会学
第6章 交換価値と未開交易の外交術
補遺A 相互性と親族制の距離にかんするノート
補遺B 相互性と親族制ランクにかんするノート
補遺C 相互性と富にかんするノート
著者等紹介
サーリンズ,マーシャル[サーリンズ,マーシャル][Sahlins,Marshall]
1930年生まれ。ミシガン大学卒業。コロンビア大学、ミシガン大学を経て、シカゴ大学教授。現代アメリカの代表的人類学者。人類学と歴史学、経済学、社会学、政治学等を綜合する新進化論の理論的主導者として知られた。その後構造主義にのめり込み、構造主義が最も不得手とすると一般的に考えられている歴史研究と構造主義を融合する構造主義的歴史研究にうち込んでいる
山内昶[ヤマウチヒサシ]
1929年東京生まれ。京都大学仏文学科卒業。同大学院(旧制)修了後、パリ大学高等研究院に留学。大手前大学教授、甲南大学名誉教を歴任し、2006年9月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
12
人類学者が自らの貧富のフィルタで石器時代の狩猟採集民を評価することに対し、1日2000kcalの食物摂取や4-7時間の労働時間等という調査データから反駁した「始原のあふれる社会」の章が本書冒頭にある。ここから著者は、非定住的で家族単位の家族制生産様式から労働や蓄積を強化する首長制への転換を辿る。その際「相互性」(reciprocity=互酬性)概念に注目し、喜んで行う肯定的互酬と戦略的に行う否定的互酬に区別してモースの贈与論を否定の側に置き、ヒエラルキーや貧富の発生を定住共同体同士の緊張した相互性に見る。2024/03/24
壱萬弐仟縁
11
1972年初出。家庭教師の実働時間のような、ドーブ族の週労働は15時間、一日平均2時間9分(33頁)。始原の時代で。今も1コマはそんなものか。小農研究のチャーヤノフのやっている家族経営分析(106頁)は、現代のE.トッドの家族社会学をも想起させた。チャーヤノフは、生産強度とか、労働強度という用語を使いながら実証研究した。彼の規則は、使用のための家族制生産システムでは、労働強度は、生産単位の相対的労働能力と反比例的に変動する、ということ(109頁)。現代日本は単身世帯激増で、イエの論理や家族、地域解体する。2014/01/19
こひた
2
第三次産業をまとめて考えるのはやめにしよう2012/11/04
みみ
1
未開社会では、貧富の格差が大きければ大きいほど、富者から貧者への贈与交換が積極的に行われる。困っている人を助け借りを作ることで、今後の見返りを期待する。純粋に好意のみで助けることはないの?? また、彼らは狩猟採集を基軸として生活しているため、”食べ物”の贈与交換は特別なものとされている。この贈与は社会性を始動、維持、破壊するための仕組みとして用いる。2020/07/14
環世界
0
サーリンズの主著のひとつにして経済人類学の金字塔。狩猟採集社会は現代人よりもはるかに少ない労働投資で欲求を充足させ、豊富な文化的時間を謳歌していたという「始原の豊かな社会」のテーゼ(第1章)と、モースの言うハウは霊的実体ではなく第三者を介して得られた利潤のことだとする議論(第4章)が特に重要。2020/02/03