出版社内容情報
『草枕』と通底する『善の研究』の「純粋経験」の論理をはじめ,西田哲学の世界を自在かつ批判的に考察。哲学の人間学への回帰,文学との緊密な関係の樹立を促す。
内容説明
西田幾多郎『善の研究』における「純粋経験」の論理は、夏目漱石『草枕』のテーマと通底している。そのことから説き起こし、西田哲学の「即非」「場所」「我と汝」等々の論理、その後の系譜を読み解いてゆく。しかし一方、西田の原理中心的で宗教的指向の強い「上からの哲学」を批判、尋常普通かつ凡庸なる人間の生活に根ざし、醜悪な暗部をも直視する人間学として、哲学の再生を訴える。ドイツ観念論中心に哲学研究に生涯を捧げた著者が、「大凡下」の立場で哲学への思いを切々と語った書。
目次
1 哲学の文学的考察
2 漱石と西田の共通性と相違
3 哲学者の表現
4 西田哲学の原理研究
5 西田の「即非の論理」
6 西田哲学における原理研究の転換
7 西田の歴史的世界
8 西田哲学における人間の問題
9 西田哲学の宗教的指向
10 悪への視点
11 西田以前及び以後