出版社内容情報
幸福と道徳の緊張関係、道徳的配慮・社会的承認・政治的正当性と善き生の関係から、凡百の幸福論を超えて新たな思考をもたらす。幸福に関して、それが内容的に何であるかに議論が集中しがちだが、本書は幸福の「形式」という斬新な視点を打ち出し、道徳的配慮・社会的承認・政治的正当性に関する説明が依拠する善き生の形式について議論を展開する。道徳が幸福を犠牲にしているかもしれないという「幸福と道徳との緊張関係」から、凡百の幸福論を超えて、幸福についての新たな思考をもたらす。
序言
第1研究 幸福と道徳との緊張関係
1-1 プラトンによる問題提起
1-2 カント、同一性なき統一
1-3 ニーチェの挫折
1-4 現代における試み
1-5 コンフリクトとしての道徳
第2研究 幸福の形式に関する試論
2-0 序論
2-1 幸福の意味
2-2 幸福に関する考察
2-3 幸福の条件
2-4 善き生の形式に向けて
2-5 善き生の内実
2-6 善き生の定数と変数
2-7 幸福と道徳
第3研究 道徳の名宛人と道徳のパートナー
3-1 承認の倫理
3-2 普遍性と平等
3-3 トゥーゲントハットならびにハーバーマスにおける非-相互的な義務
3-4 第一次の拡張
3-5 第二次の拡張
3-6 道徳の名宛人
第四研究 道徳の優位
4-1 条件つきの道徳と無条件な道徳
4-2 道徳に対する七つの異議申し立て
4-3 パスカルの賭けとの類比による議論
訳者あとがき
人名索引
マルティン・ゼール[ゼール マルティン]
著・文・その他
高畑 祐人[タカハタ ユウト]
翻訳
内容説明
成功すること、順調であること、仕事、承認、価値評価、願望の実現、傷つけ/傷つけられること、他者への配慮、主観的な幸せと客観的な幸せ、普遍性と平等、善き生―。幸福と道徳との緊張関係から倫理学の根本問題を多角的に論じて、“幸福”の地平に新たな思考の実践を切り開く。
目次
第一研究 幸福と道徳との緊張関係(プラトンによる問題提起;カント、同一性なき統一 ほか)
第二研究 幸福の形式に関する試論(幸福の意味;幸福に関する考察 ほか)
第三研究 道徳の名宛人と道徳のパートナー(承認の倫理;普遍性と平等 ほか)
第四研究 道徳の優位(条件つきの道徳と無条件な道徳;道徳に対する七つの異議申し立て ほか)
著者等紹介
ゼール,マルティン[ゼール,マルティン] [Seel,Martin]
1954年生まれ。ドイツ文学・哲学・歴史学をマールブルク大学とコンスタンツ大学で学び、“Die Kunst der Entzweiung”(「分裂の芸術」)によって哲学博士号を取得。1990年にはコンスタンツ大学に“Eine ¨Asthetik der Natur”(「自然美学」)を提出して教授資格を得た。1992年から1995年までハンブルク大学教授、1995年から2004年までギーセン大学教授を務め、2004年にフランクフルト大学理論哲学講座正教授に就任
高畑祐人[タカハタユウト]
1961年生まれ。名古屋大学・南山大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。