内容説明
人権と平等の国フランスで、「移民」という現象は歴史的にどのように出現し、推移し、語られてきたか。国民国家の記憶と歴史記述のなかで長らく無視されてきた存在に光をあて、1988年の初版刊行以来、移民・外国人差別、脱植民地化の問題を論じる際の必須文献となった古典的研究。アナール派歴史学そのもののラディカルな認識論的問い直しから始まる、もう一つの「記憶」の歴史。
目次
第1章 記憶の場ならざるもの
第2章 カードと法典
第3章 根こぎにされた人びと
第4章 「フランスよ、おまえは私の根を傷つけた」
第5章 三つの危機
第6章 フランスの再構築
結論 フランス革命二百周年祭にあたっての小論
著者等紹介
ノワリエル,ジェラール[ノワリエル,ジェラール] [Noiriel,G´erard]
1950年フランス、ナンシー生まれ。社会科学高等研究院教授、専門は国民国家および移民現象の社会史。比較的貧しい家庭の出で、中学校教師としてロレーヌ地方の町ロンウィに赴任、鉄鋼労働者の運動に参加するなかで移民の重要性を見出す。製鉄所閉鎖反対闘争が組織されると、労働総同盟が設立したいわゆる自由ラジオ「ロンウィ・クール・ダシエ」に参加し、1984年には博士論文を元に書いた『ロンウィ、移民とプロレタリア』(フランス大学出版)を公刊(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ラウリスタ~
17
フランスにおける移民問題が、ここ数十年で突然現れた問題ではなく、19世紀からあらゆる形で存在していた問題であることを示す。その上で、なぜか「アメリカは移民国家だけれども、フランスはそうではなく」という事実とは全く異なる言説が流布していたことについても。イタリアやスイスからの移民に比べ、地位の低かったポーランド移民が、世代を経るにしたがって、新たなタイプの移民よりも高い階層へと上昇することなど。もちろん、移民がフランス文化にもたらした多大な貢献と、人口減少に伴う国家の地位低下を回避したという功績にも目が向く2015/11/23