内容説明
1696年、反三位一体論争のさなかに刊行されたトーランドの主著。イングランドではミドルセックス大陪審により告発され、アイルランド議会下院では焚書・逮捕が決議された。啓示宗教を基盤とする社会において自然宗教を真の宗教と見なし、国教会の統制下でキリスト教批判を展開した問題作。
目次
第1部 理性について(理性でないもの;理性はどこに存するか;情報を得る手段について;確信の基盤について)
第2部 福音の教理は理性に反するものではない(本当の矛盾または矛盾と思えるものを宗教のうちに認める不条理とその結果;この議論にかかわる啓示の権威について;キリスト教によって意図されたのは合理的で理解しうる宗教である。これを『新約聖書』に見られる奇蹟、方法、文体から証明する;人間理性の壊廃から引き出される異議に答える)
第3部 福音には秘義的なもの、または理性を超えるものは存在しない(異邦人の著作に見られる秘義の由来と意味;あるものに関して、その特性すべてについて十分な観念を持たない、またその本質についてまったく観念を持たないことを理由に、そのものを神秘と呼ぶべきではない;『新約聖書』と古代キリスト教徒の著作における秘義という言葉の意味;聖書のある章句、信仰の本性、奇蹟から引き出される異議に答える;秘儀がキリスト教に持ち込まれたのは、いつ、なぜ、誰によってなのか)
感想・レビュー
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ラウリスタ~
9
1696年、ロンドン。トーランドはアイルランド生まれ、ローマ・カトリック教徒の親族のもとで育てられ、「偶像崇拝と迷信」から逃れて16歳の時にプロテスタントに改心。イギリス国教会ではない。そんなトーランドがキリスト教の「秘儀」、三位一体とか、聖体とかを批判する。たしかに、聖書からそれらの根拠を見つけるのは容易ではないだろう。キリスト教草創期の教父たち、あの尊敬される人びとが、布教の容易さのために、異教のシステムを多く導入したと考える。「多神教」カトリックを批判するあまり、「一神教」イスラム教をも支持する。2015/03/31