内容説明
わが国の代表的な国語学者・言語学者であり、文化勲章受章者という像が支配的な金田一京助。だが実は、敗戦による自己反省なきままに温存された国語学の宿痾を一身に体現する人物でもある。同郷の石川啄木にたいする無償の援助をはじめ、美談に彩られたそのイノセントな人物像の陰には、日本語を考える際に看過できない問題が存在する。金田一京助の内在的論理を実証的に追いながら、近代日本語成立に潜む力学を浮き彫りにする。
目次
第1章 問題のありか―「イノセント」であること
第2章 アイヌ語との出会い―日本帝国大学言語学の射程
第3章 「言語」論とその展開―戦前・戦中の議論を軸に
第4章 歴史認識・社会論―敗戦直後の議論を軸に
第5章 あらたな国語を求めて(一)現代かなづかいをめぐって
第6章 あらたな国語を求めて(二)標準語論と敬語論をめぐって
著者等紹介
安田敏朗[ヤスダトシアキ]
1968年神奈川県生まれ。91年東京大学文学部国語学科卒業。96年東京大学大学院総合文化研究科博士課程学位取得修了。博士(学術)。京都大学人文科学研究所助手を経て、一橋大学大学院言語社会研究科教員。専門は近代日本言語史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ステビア
20
金田一の「植民者」性や議論のinconsistencyを暴くというもので、前者については特に面白く読んだが、金田一を叩きたい気持ちが先行しすぎではという気がした。2020/11/30
misako
4
金田一京助論というよりも、著者の安田敏朗さん目当てで読みました。やはり安田さんの国語の近代史はワクワクします。女性言葉についても触れられていて満足です。2016/03/25
Akira Nogami
1
金田一京助論ではあるが、同時に戦中・戦後にかけての知識人論であった。当時の知識人が抱えた天皇制や国体との距離など、考えさせられる。彼の「イノセント」さの裏に潜むある種の権力性、暴力性に切り込む姿勢はさすがである。著者は言語史の専門家であるが、歴史社会学を専攻する私にとっても興味深い一冊であった。2015/07/04
kenken
1
少々金田一批判の「切れ味」が良すぎるが、とくに終戦後の国語論など非常に勉強になった2010/03/21
deltalibra
0
日付曖昧2011/01/14