内容説明
マスメディアによる少年犯罪報道は、ほんとうに正しいのだろうか。一九九〇年代に「頂点」に達したといわれる少年犯罪の本質を、報道のされ方、統計の見方などの側面から歴史的に検討し、現在の少年犯罪の課題についても論及。「互いに働きかけあい、相互に行為しあうなかで作り出されるもの」として考察する。少年犯罪を考えるための基準点をステレオタイプな説明を避けて提示する。
目次
第1章 少年犯罪とは何か
第2章 明治の少年犯罪
第3章 大正の少年犯罪
第4章 昭和(戦前)の少年犯罪
第5章 昭和(戦後)の少年犯罪
第6章 少年犯罪の現在
第7章 改正少年法と犯罪少年の処遇
著者等紹介
鮎川潤[アユカワジュン]
1952年名古屋市生まれ。東京大学卒業。大阪大学大学院修士課程修了。スウェーデン国立犯罪防止委員会客員研究員、南イリノイ大学フルブライト研究員を経て、現在、金城学院大学現代文化学部教授。専攻は犯罪学、逸脱行動論、社会問題研究。おもな著書に『少年非行の社会学』(世界思想社)、『犯罪学入門―殺人・賄賂・非行』(講談社現代新書)がある
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感想・レビュー
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mana
32
2001年出版本。やや古いデータではあるが、納得できる部分も多い。明治から時代ごとの少年犯罪を取り上げ、統計の取り方の変更など、考察も。2023/02/19
テツ
16
「最近の少年犯罪は異常だ。これは世の中のせいだ」的な物言いが一時期目立っていたけれど、戦後まもなくから高度成長期あたりまでの少年犯罪(少年死刑囚となるような事件は特に)の「異常さ」は凄まじい。データを見ても客観的に事件の内容を見ても、人権意識の高まりや教育水準の引き上げにより基本的に数も質も時代が進むごとに改善されている。目立つように感じられるのはメディアが取り上げるから。それをフィクションとして楽しむ人間がいるから。ただそれだけ。地道な教育と生活水準の向上による貧しさの根絶は一定数の少年犯罪の芽を摘む。2022/01/21
富士さん
2
初めて読んだときはきちんと読んでいなかったので今回改めて精読。著者の経歴から見て論旨は読まずして明白といった感じですが、ワタシのイデオロギーと合致するので大好物です。社会状況の社会構築主義的創造の過程が少年犯罪観という具体例で知ることが出来ることが素晴らしく、勉強になりました。少年犯罪の統計と印象との差は、鼻持ちならない弱者を悪として吊るし上げる醜悪な心性に他ならないと思いますが、これが問題にされるようになったのは、日本人が人の命に関心を持ち、人の尊厳に敬意を払うようになったからだと個人的には思います。2014/08/31
Tai
2
少年犯罪は増えているといわれるが、はたして本当にそうなのか。明治~昭和にかけての少年犯罪(触法・虞犯含む)を解説し、現在の少年犯罪についての考察がなされている。2013/06/05
遥かなる甲子園
0
「遊び型」犯罪の命名が昭和46年、統計変化による中産階級の激増。知らなければ勘違いを誘発する貴重な情報が示されている。少年と成人との違いは何であろうか。2016/07/26