内容説明
画家は「崩壊と生成」をテーマに、一年の探究の旅に出た。タイのアユタヤ、インドのジャイプール、イランのペルセポリス、中国のトルファン、北アフリカのサハラ…。「時」と対峙する歴史遺跡や文化遺産は、何を語りかけてきたか。そして朽ちかけた街々、土、砂、大自然の懐にたたずみ、画家は何を考え、何を見出したか。アートよ、人間よ、甦れ!経済とテクノロジーの文明の彼方へ。
目次
プロローグ ざらざら・つるつる
1 タイ―アユタヤ、仏との対話
2 ヴェトナム―こんなに雨続きでは出直そう
3 インド―動物たちのいる風景
4 イラン―古代ペルシャとモンゴルとイスラムの歴史
5 旅の合間―東京で死に出会えるか
6 中国―黄土高原から西域へ
7 北アフリカ―乾燥の風に身をまかせて
エピローグ 流体の相
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
A.T
4
大枚はたいて世界中の廃墟を旅する美術家宇佐美さんの行動力に感謝です。
noko
2
廃墟って言っても、昭和初期の廃業ホテルや、病院跡とかではなくて、世界中の文化的な廃墟(人が住んでいない)を画家が巡り、説明している本です。日記形式になっている部分と、説明部分が混在していて、説明部分は学術的。日記部分は紀行本で誰にでも解りやすい。建物は、一度は人により完成しているけれど、時間による風化・破壊で新しい一面を見せる。アユタヤには私も何度か行ったが、宇佐見氏のような、見方は出来なかった。朽ちているのも有りなんだと思える発想が素晴らしい。修復されて新しい物だけが素晴らしいとは限らないと知った。2014/12/01
marixtaka
1
画家である作者が、人間の作った作品は常に未完成だと考えているところに共感した。人の手を離れた作品が、時間や自然の流れの中で、自ら新しい生成を成し遂げるのだという。生命は自己だけでは非完結であり、世界に向かって開かれている。廃墟の魅力を語りながら、傲慢になり過ぎた現代人に警鐘を鳴らしている。廃墟に魅了されてしまう理由を言葉で表現すると、こうなるのでしょうね。とはいえ、語らずとも「好きなものは好き」で、いいような気もしたり。2013/05/30
真林
0
画家である作者の視点から見た世界各地の廃墟の世界。写真資料などが多く、詳しいけれどわかりやすい旅行記に似た印象を受けた。気になる言葉の回し方などもいくつかあり、なかなか楽しめた。2013/06/20