内容説明
探れば探るほど、思いがけない漱石と美術の関係。美術史・図像学の方法を駆使して迫るユニークな謎解きエッセイ。
目次
『夢十夜』の発想源
白馬会と漱石文学のヒロイン
青木繁の失われた素描の影響
漱石から鴎外への問いかけ―『趣味の遺伝』と『文芸の哲学的基礎』
鴎外から漱石への応答―『ヰタ・セクスアリス』と『青年』
『虞美人草』の屏風をめぐって
『それから』における花の図像学と色彩
再び『それから』に漱石の美術的教養を読む
いつ「画工」は「画家」になったか―『草枕』『三四郎』を中心に〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yn1951jp
36
西洋美術への憧れが『夢十夜』の発想源、漱石のヒロインのイメージは、白馬会の画家たちの描いた女性像、華厳の滝に投身した学生へ捧げた『水底の感』は青木繁のデッサン『混沌』からのイメージ、抱一の罌粟図屏風を見て『虞美人草』の死の床が描かれた、『草枕』の温泉での那美の裸体描写が青木繁の『温泉』を描かせた、『明暗』の構図は失楽園(アダムとイヴとリリス)で画家は青木のイメージ、『青鞜』の新しい女たちと漱石のヒロインたちとの共通性。著者の漱石への愛情に充ちた美術的、図像学的推理が、ロマンチストとしての漱石を楽しませる。2016/01/30
遠藤三春
2
漱石作品中に描かれる風景描写や人物たちのモデルを探る。どこまで念頭にいれて作品書いていたんだろう。とりあえず『夢十夜』の第一夜の白百合のモデルがオディロン・ルドンという人の<沼の花、悲しげな人間の花>だったら、やだ怖い2011/09/10