内容説明
「スロー」をキーワードに、スピードに象徴され、環境を破壊しつづける現代社会に抗するライフ・スタイルを求めて、さまざまな場所で模索し、考える人々の言葉に耳を澄ます。人と自然とのつながり、人と人との結びつき、身体、日常生活、文化―その根拠にある“遅さ”という大切なものを再発見するユニークな試み。
目次
第1章 もっとゆっくり、今を
第2章 スロー・フード―食べ物を通じて自分と世界との関係を問い直す
第3章 「三匹の子豚」を超えて―スロー・ホームとスロー・デザイン
第4章 「いいこと」と「好きなこと」をつなぐ―スロー・ビジネスの可能性
第5章 テイク・タイム―「動くこと」と「留まること」
第6章 疲れ、怠け、遊び、休むことの復権
第7章 さまざまな時間
第8章 ぼくたちはなぜ頑張らなくてはいけないのか?
第9章 住み直す
第10章 スロー・ボディ、スロー・ラブ
終章 遅さとしての文化
著者等紹介
辻信一[ツジシンイチ]
文化人類学者、環境運動家。1952年生まれ。明治学院大学国際学部教員。「スロー」というコンセプトを軸に環境=文化運動を進める。1999年、NGO「ナマケモノ倶楽部」を設立、世話人を務める。「スロー」、「カフェスロー」、「スローウォーター・カフェ」、「ゆっくり堂」などの会社設立に参加、環境共生型ビジネスに取り組むほか、数々のNPOやNGOにも参加している
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はなよ
21
ところどころにあるスロービジネスの宣伝が無ければ満点を与えたい本。そもそも、効率や将来を気にせず今を楽しむために生きるという主張と、地球環境を守るために食や家を自然に近づけるという主張は矛盾しているように感じられる。2018/07/28
なつ
5
『昔は「生きる」のに理由など要らなかった。「生きる」ということに過不足はなかった。そう感じられたのはなぜだろう。多分いのちというものが自分には収まりきらない自分を超えた自分以上の存在だと感じていたからではないか。そこでは現代の我々が思うようにいのちは自分の所有物ではない。それは神秘であり奇蹟。それは聖なるものと感受されていたのではないか。「今」はいのちの表現であり「答え。その「今」をその「答え」を人間はひたすら生きてきた。』ここを読んで『「今」は神からの賜物。だから英語で「present」』を思い出した。2015/08/10
玲
5
文化人類学の平易な良書でありながら読み物としても面白かった。将来ばかり追いかけて今を大切に生きていないという指摘にどきりとさせられる。この本では、自分のペースで生きることが全肯定されている。障害があるからといって「健常者」に「感謝」しなくてよいのだということ、共通目標に向けて頑張ることをしないということ、愛嬌ある怠惰のすすめなどが印象深かった。地球全体に「北」の文化が流布すると文化人類学は消えてしまうという悲しい未来予測。2013/01/10
morgen
4
友人に勧められて。 スピード社会を見直す論説をスローをキーワードにして、食、住宅、経済、セックスなど、様々な側面ごとにまとめた本。スローライフのやや学術的な入門書。 将来のために色々我慢して、今をきちんと生きていない人が多い、というような指摘が心に残った。大量生産された加工品ばかり利用して、時間と手間を掛けずに忙しく暮らしていると、本当に大切にすべきものを見失うんだな。自戒を込めて。2012/01/28
かずぼん
3
時代の流れの速さに抗って、スローに生きる意味を改めて問いかける刺激的な本である。2023/12/18