内容説明
仕事を休んでリハビリがてらに海外旅行や転職活動に励む「うつ病セレブ」、その穴埋めで必死に働きつづけて心の病になった「うつ病難民」。格差はうつ病にもおよんでいる。安易に診断書が出され、腫れ物に触るかのように右往左往する会社に、同僚たちはシラケぎみ。はたして本人にとっても、この風潮は望ましいことなのか?新しいタイプのうつ病が広がるなか、ほんとうに苦しんでいる患者には理解や援助の手が行き渡らず、一方でうつ病と言えばなんでも許される社会。その不自然な構造と心理を読み解く。
目次
序章 一億総うつ病化の時代
第1章 うつ病セレブ
第2章 うつ病難民
第3章 「私はうつ」と言いたがる人の心理
第4章 うつ病をめぐる誤解
第5章 「自称うつ」と「うつ病」をどう見分けるか?
第6章 うつ病と言うとなんでも許される社会
終章 ほんとうにうつ病で苦しんでいる人のために
著者等紹介
香山リカ[カヤマリカ]
1960年北海道生まれ。東京医科大学卒業。精神科医。現在、立教大学現代心理学部教授。豊富な臨床経験を活かして時代の流れをみごとに切り取ることで知られ、さまざまなメディアを通じて批評活動を続け、現代人の心を読み解く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
28
まだ一部ではあるが「うつ病」がかつての「隠すべきマイナスの刻印」から「身体疾患と同じ"普通の病気"」を通り越して、「人々から一目置かれるアイデンティティ」になろうとしていること。また、うつ病が増加した最大の原因は「現代人は悩めなくなった」ことにあるのではと著者は書いている。 それは「悩みを悩みとして抱えることが出来ずに、すぐに気持ちの落ち込み、身体のだるさ、といった症状に変えてしまう。悩みの直面して、あらゆる観点から対峙することがとても苦手ではないか。当事者の私がそうなのかもしれない・・・・2014/02/17
yumiusa
25
【図書館】まさに弟の嫁。SNSのタイムラインに薬の写真をUPし(それも私にだけ公開)スルーしていると「これだけ飲んでるんですけど、どう思います?」とメッセージを寄こす。「眠れない眠れない」と言いながら、深夜までSNSに高じていれば、そんなもん健康な人だって眠れないだろう。そして何故かこの「私はうつですから!」という免罪符を、水戸黄門の印籠のようにひけらかす輩に共通しているのは「すぐ泣く」ということ。要は「うつ」だろうが「泣くこと」だろうが、その先に相手が何も言えなくなる術を知っていて上手に使っているだけ。2015/10/30
ヨミナガラ
24
“「仕事には行けないが、海外旅行や高級レストランでは社交的にアクティブに」という“うつ病セレブ”は、最後に説明した新しい非定型うつの問題と、自由や権利意識の濫用といった問題とが重なることによって”/“臨床の現場では、じつは「これって内因性? それとも心因性?」と病因を考えている”“公の場ではDSMやそれに準じたICD(国際疾病分類)といった国際的な診断基準に従って、「病因は問わない」との態度をとらなければならない。/専門家が抱えているその矛盾も、うつ病を一般の人にとって、よりわかりづらいものにしている”2014/10/12
カッパ
21
【796】心の病の様子が変わってきたなかでアイデンティティとしてうつ病が流行っているのかもしれません。責任逃れのためや無意識的につかい本当は向き合う必要があることから逃げているとかもしれません。私もそうですが病気を理由にして逃げてはいけないなと思いました。2018/06/13
ミナコ@灯れ松明の火
21
「うつである」ことがアイデンティティになってしまう人たち。「うつ」と診断されたがる人たち。本当にうつで苦しんでいる人たちに対する偏見を助長することになってはいけないけれど、自分ができないことに対して「うつなんだから仕方ない」と言い訳をつけたがること。とても興味深く、今までもやっと抱えていたものの輪郭がはっきりしてきた感じ。2010/06/14