内容説明
多民族国家アメリカで論争をまきおこした、「差異」共存の思想。多文化主義の歴史背景を、教育、ジェンダー、マイノリティなど、現在の争点を整理し、解説してゆく。PC(政治的な正しさ)が求められる言語使用の問題をはじめ、卓抜な視座で語られた社会学。近代における普遍性と差異の哲学的アポリアに迫る。
目次
第1章 多文化主義の歴史的起源と現在の枠組
第2章 多文化主義論争
第3章 ポリティカリー・コレクト
第4章 認識論上の難問(ゴルディオスの結び目)
第5章 エスニシティ、個人主義、公共空間
第6章 公共空間と多文化的空間
第7章 多文化主義と近代性の危機
著者等紹介
三浦信孝[ミウラノブタカ]
1945年生、中央大学文学部教授
長谷川秀樹[ハセガワヒデキ]
1970年生、千葉大学助手
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感想・レビュー
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KA
2
若きフランスの社会学者が1997年に書いたアメリカ多文化主義。訳者あとがきで指摘されているように、誇張や見落としもあるので、「概説書」というよりも、本書それ自体が90s多文化主義をめぐる「言説」そのもの。が、その視点から見ると大変に面白かった。批判的叩き台としてシュレジンジャー『アメリカの分裂』が、議論的並走としてギトリン『アメリカの文化戦争』があるのだが、中盤以降の差異をめぐる表象の議論の先行研究は紛れもなくフレドリック・ジェイムソン『ポストモダニズム』(実際に引用される)だし、2021/05/26
壱萬弐仟縁
1
ジェンダー問題のレズやホモのようなマイノリティと、ふつうのマジョリティとの共生をいかにすべきか、あるいは、ポストコロニアルの時代における、異文化インターフェースのありようについて描写されている。アイデンティティや、エスニシティといった、社会学的、人類学なテーマを差異、違いに着目して展開されているので、違いを排除するいじめの問題を抱える日本社会や日本人が読んでも十分学べることがある。2012/06/18
memoric
0
『男性的主観があたかも客観的なものとされ、それと同時に女性の視点や女性の貢献が周辺化され、見過ごされ、さらにはあからさまに抑圧されてきた。』2019/04/30