内容説明
謎を秘めて妖しく輝く火星に、ガス状の大爆発が観測された。これこそ6年後に地球を震撼させる大事件の前触れだった。ある晩、人々は夜空を切り裂く流星を目撃する。だがそれは単なる流星ではなかった。巨大な穴を穿って落下した物体から現れたのは、V字形にえぐれた口と巨大なふたつの目、不気味な触手をもつ奇怪な生物―想像を絶する火星人の地球侵略がはじまったのだ。
著者等紹介
中村融[ナカムラトオル]
1960年生まれ。中央大学法学部卒、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
346
アメリカでラジオドラマとして放送された時に、そのあまりの迫真力にパニックを引き起こしたと言われ(プロデューサーは、オーソン・ウェルズ)、またタコにそっくりの火星人の絵のもとになったのが、この『宇宙戦争』である。出版は1898年。世紀末である。そのことは小説のまさに終末部の光景に色濃く投影されている。現代の視点からすれば火星人というのはリアリティを欠くかも知れないが、当時では恒星間移動よりも受け入れやすかったのではないか。結末はやや拍子抜けの感もなくはないが、全編にわたってウェルズの想像力が横溢する作品だ。2017/01/07
Tetchy
122
火星人の襲来によって英国が疲弊するパニック小説はコロナ禍の今とリンクするものがあり、読む時期としては最適だったようだ。またもや本に呼ばれたらしい。そして2030年を目標に有人火星探査が計画されている。我々地球人が今度は火星に乗り込むのだ。その時火星人がいたら、本書のブーム再燃となりそうだ。更に火星探査機によって地球人の存在が先方に知られ、本当に侵略が始まれば、130年を経てフィクションからノンフィクションへと変貌する。名作はいつまで経っても色褪せず、そしてまだ我々は作者の想像力に及ばない現実を生きている。2022/01/16
かえで
41
1898年に発表されたSFの古典中の古典。パニック小説の元祖的な存在でもある。タコの姿をした火星人が襲ってくるというストーリーは多くの人が耳にしたことがあるのではないでしょうか。火星人襲撃という、現実には起こり得ないことがいかにも実際に起こったように書かれており、思わず恐怖してしまうほど。人々が火星人に蹂躙されていく描写はとてもリアル。そして「2つの世界の戦争」という原題と意味のすばらしさ。主人公が火星人にやられる自分を蟻や兎に例える場面は、そのまま人間とほかの動物の関係に当て嵌められる。名作です。2015/08/04
mm
25
この作品の後、設定を変えたバージョンがたくさん出ているのも当然と言える。実に多様な意味を包含しているので、どこにフォーカスするかによって何色にでも見える重奏的な響きがあった。2つの世界の対立・帝国主義批判・侵略を受けた世界の絶望感・人間の進化予想・都市化への警鐘・情報の脆さ・パニック時の人間性の崩壊・優勢学・宗教・偶然の支配力・飢餓恐怖・大量殺戮兵器の予言等々。ロンドン近郊の地図が頭にあったらより面白かっただろう。火星人はパワードスーツを着るんだよ。そして用途によって着替えることが可能とは先見の明大有り。2020/01/29
まえすとろ
24
少年期の頃にテレビでジョージ・パル制作の映画『宇宙戦争』を観て以来、学校や図書室で何度となくウェルズの児童書を読み、発表から115年という歳月を経て、なお色褪せることないそのプロットとストーリーは驚愕に値するSF小説作品の古典中の「古典」。2012/11/24