出版社内容情報
北村薫[キタムラカオル]
著・文・その他
内容説明
最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」―王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、「私」の探偵が始まった…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まこみや
216
共通テスト練習問題(Z会)の本文に本書の一部が載っていた。解き終わった後、本棚から取り出して読み始め、結局最後まで読んでしまった。主人公の「わたし」が、芥川の『六の宮の姫君』を再読して、《ああ、芥川はこんなところで、叫んでいたんだ》《一体、私は何を読んでたんだろう》とぼんやりする。今回、僕が30年ぶりに再読しての感想も全く同じでしたね。「一体、俺は何を読んでたんだろう」。大学4年生の「わたし」に比べて、自身の「読み」の浅さを痛感する、今年の初読みとなりました。2021/01/03
紅はこべ
167
本に淫したシリーズの中で最もその度合が高い作品。北村薫版『時の娘』かも。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
154
もしも私が18歳の頃、大学進学に際して文学部を選んでいたら本や作家を巡るこのようにエキサイティングな日常を送ることができていたのだろうか? 答えはおそらくノーだ。二十歳前後の私ときたら本こそ読んでいたものの、そばにいてくれる異性を渇望していたのであり、それに比べれば芥川や菊池、谷崎に対する興味などまさに大海の一滴に過ぎなかっただろう。生まれ変わったら早稲田大学文学部に入って神保町をうろつきたい。この本を読むまでは京大に入って青龍会に入部し、吉田神社でレナウン娘に合わせて踊りたいと思っていたのだけれど…汗。2012/03/13
修一郎
150
社会学ならともかく国文学専攻学生の卒論というものを想像できない工学部出身者であります。なるほどこういう風にアプローチしていくのか,である。日常のミステリーと言うより,中身は全くもって論証を伴った研究書だ。菊池寛と芥川龍之介の交流と作品の数々の関連性は知的好奇心をそそって滅法面白かった。もちろん「往生絵巻」「藪の中」「六の宮の姫君」は再読だ。高校の国語の先生が北村さんのような博覧強記だったら,さぞかし知的スリルに満ちた授業だったろうと思う。当時の春日部高校の生徒さんがちょっとうらやましい。 2017/12/14
カムイ
135
前回とは打って変わって文学を扱ったストーリー❗️楽しかった文豪も嫉妬するのかと、芥川の小説が違った見方で読めそうな気になりそう。推理小説は殺人がなくても成立するのだと改めて感じてしまう。今回も正ちゃん素敵だし洒脱にて😍2022/02/04