内容説明
1974年、エチオピア革命。約半世紀にわたって君臨した皇帝が廃位されると、著者たちは現地へ飛び、隠れ暮らす宮廷の元召使たちにインタビューを重ねる。ドア番、足台係、皇帝の愛犬の小便係、忠臣の財布運び係…。彼らの素朴な言葉から、他人を誰も信用せず、自ら張りめぐらした諜報網の中、ひたすら権力に執着した独裁者の素顔が、浮き彫りにされてゆく。3000年の飢餓と貧困の上に立った独裁から革命への日々をよみがえらせる戦慄のドキュメント。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
7
1974年の革命で処刑された、エチオピア帝国最後の皇帝ハイレ・セラシエ。その最後の数年間を、宮廷で間近に接していた人々へのインタビューから迫ったルポルタージュ。愛犬の小便係や足台(皇帝は背が低かった)係等の召使から、大臣付の事務官まで色々な立場から見た「皇帝」は、謎の人物だった。君臨すれども統治せずを地を行くような「謁見する人達を褒めるばかりで何も決めない」スタイル。いつも曖昧な事ばかり言う。革命が起きても至って無関心。正に「偉大なる空」そのもの。20世紀の絶対王政の摩訶不思議さに迷路に入ったような読後感2018/03/10
hutaketa
3
あまりにも過剰な権力は魔法と見分けがつかない。それは何気ない動作に命より重い意味を与え得る。「扉を開ける」「足台を置く」「お辞儀をする」…かの国には、独裁者ハイレ・セラシエその人のため、ただそれだけの動作を行う召使がいた。本名を隠しインタビューに臨む彼らの証言から、帝国の没落と、ひとつの動作が鮮やかに浮かび上がる。「クーデタ」の、「族長の秋」の、「カリギュラ」の世界は、その時そこにあったのだ。本書に秘められたもうひとつの魔法。それはカプシチンスキの、本質を適切な言葉に置き換える力である。2010/12/06
maja
1
60年代のスカやレゲエ音楽が好きだった。 だから、どこそこで見たライオンと皇帝が対になったようなデザインのレゲエのポスターで皇帝の顔には馴染みがあった。カプシチンスキを追いかけて読まなければそれだけで終わっていた。現人神と称えられていた皇帝の最後がもの哀しい。 2017/12/08
おとや
1
エチオピア最後の皇帝となったハイレ・セラシエの治世最後の5年ほどの様子を、彼に仕えた多くの人々(下級官吏から大臣まで)に対する入念なインタビューを通して描き出したルポルタージュ。絶対王政という、いまいち想像の及ばない生活が、様々な人へのインタビューを通して鮮やかに浮かびあがり、また、宮廷側の人々の目を通した革命の進展具合がよくわかる。2014/04/06
Katsuyuki Sakamoto
0
ラスタファリアンズの神様 黒人初めての神様 エチオピア最後の皇帝ハイレ・セラシエ2019/12/03