出版社内容情報
フランス革命固有の成果は、レトリックやシンボルによる政治言語と文化の創造であった。政治文化とそれを生み出した人々の社会的出自を考察する。
内容説明
フランス革命固有の成果は、まずは政治的なものであり、レトリックやシンボル、儀式の実践によって構成される新しい「政治文化」の創造であった。イデオロギー、国民の再生に関する言語、平等と友愛のジェスチャー、「透明」で「普遍的」なものを指向する政治言語と文化は、まさにこの革命のプロセスで創造され、革命の展開を左右することとなった。また、この政治文化は、それを生み出した人々の社会的区分や経済的変化と「メビウスの帯」のように関係していた。文庫収録にあたって、著者による新たな「まえがき」を付す。
目次
序説 フランス革命の解釈
第1部 権力の詩学(フランス革命のレトリック;政治的実践の象徴形式;急進主義の心象表現)
第2部 政治の社会学(フランス革命の政治地理学;新しい政治階級;アウトサイダー、文化の媒介者、政治的ネットワーク)
結論 政治文化における革命
付録
著者等紹介
ハント,リン[ハント,リン] [Hunt,Lynn]
1945年生まれ。現在、カリフォルニア大学ロサンゼルス校特別研究教授。著書多数
松浦義弘[マツウラヨシヒロ]
1952年生まれ。現在、成蹊大学文学部特別任用教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てれまこし
12
ドイツ知識人が憎んだフランス文化がどんなものだったかを知りたくて手にしたが、ちょっと系統がちがった。革命を原因と結果をつなげるだけのベルトコンベヤーみたいに見なすマルクス主義や近代主義者に対して、著者は革命そのものは何であったかを問う。革命家たちが熱狂したのは資本主義経済や中央集権国家の完成ではなく、新しい「国民」の創造のためのシンボルやレトリックだった。国民の平等、一体性、同質性を表現する政治的儀式こそが革命の本質であった。革命の急進派は最も近代的ではない地方、しかも地方政治のアウトサイダーたちだった。2021/08/18
ナン
8
全体として、当時の情勢、空気感等をもっと勉強しないと理解が難しい。二部構成で、I部のレトリックやシンボルに興味を惹かれて買ったが、深い理解のためにはトクヴィルやマルクス等のフランス革命についての考え方や革命前の時代状況等の知識が必要か。II部は、革命が地域にどう波及したかを選挙結果や地方の役職者の職業等から分析していて興味深い内容ではあるが、如何せんフランスの地理や当時の暮らしについて知識が足らないので、この分析の意義や価値の大きさがあまりわからなかった。同じような分析を日本にあてはめたら面白そうだが。2021/01/11
Ex libris 毒餃子
6
「政治文化」というキータームでフランス革命を論じた本。マルクス主義史観から離れて分析し、政治体制が文化にどのように影響を与えたかがわかる。服装などに如実に影響が出ていて面白い。2020/11/15
ポルターガイスト
5
地道な実証研究を通して,フランス革命期の「ブルジョワ」の正体の流動性や,中央と地方の双方向の関係性を指摘する。この道に通じている人にとっては刺激的な一冊だろうと思う。個人的にはフランス革命期の「党派的」な表現がそのまま国民統合の象徴として機能していること,しかもその起源が結局のところ王政にあることを面白く思った。2024/04/04
八八
5
リン・ハントはフランス革命史の大家である。本著では革命の固有な点として、シンボルや儀式等の政治文化の創造にあったとする。その政治文化が新たな国民共同体の創造や政治行動の論理ともなっていたと指摘する。そして、政治文化は伝統の決裂を生み、それによって政治階級はアンシャンレジーム期の貴族や官僚から教師や商人などのマージナルなものへと性格を変化させた。このことからマルクス主義史観やその修正主義史観が想定した"安定した階級"が存在しなかったことを指摘する。以上のように革命へ新たな視点を提示した重要な著作である。2020/11/22