内容説明
浅草は奥山の生人形、西洋油画を並べた油絵茶屋、パノラマ館での戦争体験、掛け軸になった写真…19世紀日本のエロ、グロ、ナンセンス。細工師の手になる奇々怪々な造形表現のかずかずは、市井の人びとはもちろん、外国人をも驚かせ魅了したが、それにもかかわらず、西洋文明に倣えの近代化が押し進められる渦中で排除され、やがて歴史に埋もれてしまう。美術という基準からはずれたアウトローを掘り出し、幕末・明治の驚くべき想像力を検証する、転換期の日本美術への新たな視座。図版多数。
目次
乍憚口上
石像楽圃―夫婦か知らねど匹付合
手長足長―活ける人に向ふが如し
胎内十月―色事は何処の国でも変りやせぬ
万国一覧―洋行せずして異国を巡る奇術
油絵茶屋―みるハ法楽みらるゝも衆生済度
パノラマ―人造ニナリテ天設ヲ欺ク奇奇怪怪
写真油絵―写真ニシテ油絵油絵ニシテ写真
甲胄哀泣―油絵ハ能く数百年の久しきを保つ者なり
写真掛軸―之を眺むるに風韻雅致を極め
仕舞口上
穿胸国のひとびと―文庫版のためのあとがきにかえて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
i-miya
7
2005.10.06 P394 歌川国芳(浮世絵師) 1855 和漢三才図絵 明治の初め 浅草 油絵茶屋 美術・・・官が民へ教え込んできた技術 P014 日本美術史 万国共通の美の基準 与えられた基準に従い過去にさかのぼって日本の造形表現を整理しなおす 作業 美術の基準からはずされたアウトローたちの作品 美術でないと低俗 美術屋と見世物 P020 石像楽圃 夫婦かしらねど匹付合 2005/10/09
Metonymo
2
「世の中に美術館が次々と増えて、西洋絵画や西洋風絵画が次々と集まれば、それで日本の文化が向上したとなどと考えるなら(略)このたかだか百年の間に失ったものの大きさを少しは考えてもよいのではないだろうか」写真と油絵が同時に入ってきた明治時代。いかに写実性と歴史画を最上に置く西洋絵画は受容され、土着的な見世物文物は排除され、日本人のまなざしは西洋のまなざしを一度通過したものと化したのか。労作2013/05/27
陽香
1
199306222013/02/05
tkm66
0
凄まじく面白かった。著者はその後ドンドン売れて来ている模様。1999/06/30