内容説明
明るく華やかな南フランス・プロヴァンス文化のトルヴァドゥール的情趣と共感しあい、ニーチェの思想の光と影が多彩に明滅する哲学的アフォリズム・詩唱群。神の死に関するニヒリズム、永遠回帰思想の最初の定式化、ツァラトゥストラの登場など、ニーチェの根本思想の核心が明確な姿を現わしてくる重要な作品である。重大な精神的転換期にあった哲学者の魂の危機の記念碑。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
∃.狂茶党
17
病が癒、躁転したニーチェ。 なんか別の病気になったような気がする。 力の話が繰り広げられる。 苦痛を与える権力。 偉大な人間、誇りある人間。 同情は弱者のものだとする思想。 そんなものが気高いとは到底思えないが、高揚感とはそういったものだろう。 女性に対しての視点も、単純な家父長制とは異なるのかもしれないが、あまり良いこととは思えない。2023/09/26
karatte
16
2013年3月3日に殊能将之『子どもの王様』と一緒に購入したらしいが、早々に読み終えた『子どもの王様』に引き換え、こちらは3年近く放置してしまっていた。前作『曙光』を読み終えた勢いに乗じて漸く読了。付けた折り目の数は前作を上回る。箴言集を挟み込む形で収録された劈頭の押韻詩と付録の詩歌は、『曙光』の続編でありながらも遥かな思想的深みを湛えた〈神の死〉や〈永遠回帰〉〈ツァラトゥストラ〉といったニーチェ思想の最重要タームの誕生を高らかに祝福するかのようで、単なる余技を超えた輝かしい彩りを本書に添えている。2016/02/07
愁
8
厭世詩として。畳み掛ける様な箴言の連続に、厭世詩として読んでいるのに気持ちが鼓舞される。信太正三氏の訳にも勢いが感じられ、良い効果を生んでいると思う。
タケイ
7
「ニーチェの哲学はニーチェ全集にある」(細谷貞雄)と言われるが、本書も例に漏れず体系的な思想は語られず内容バラバラの断章形式。そして多くの章は他の本や解説書を参照しないと意味がわからない、難解な本だった。例えば永劫回帰説は、12章、全ての快と不快は繋がっているという話で予習、360章の「船はあっちへ――進まざるをえないがゆえに、あっちへ行こうと「欲する」」てとこで復習される(5書だけ『ツァラトゥストラ』の後の出版)。他にもこれはあれだなという箇所が色々あったが章多すぎてメモ取るのを途中でやめてしまった。2022/08/31
roughfractus02
6
真理から解放される知を確信するなら、それをまず真理から解放すべきである。ゆえに著者は持続しようとする事物の意欲を力として捉え、無力化して認識となり、その極みである真理が生まれたとする情念と力の系譜を構想した。この価値転換において神を中心としたシステムで無力さを擁護するキリスト教が根底から批判される。「神は死んだ」が影のように蔓延るこのシステムに対し、解釈の優位(解放された知)を主張する本書は、一回限りの生を定めた神に対して、放浪する「私」が無限回生きることに耐えられるか、という「最大の重石」を課していく。2017/08/08