ちくま新書<br> グロテスクな教養

電子版価格
¥715
  • 電書あり

ちくま新書
グロテスクな教養

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 新書判/ページ数 253p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480062390
  • NDC分類 002
  • Cコード C0200

内容説明

「教養とは何か」「教養にはどんな効用があるのか」―。大正教養主義から、八〇年代のニューアカ、そして、現在の「教養崩壊」まで、えんえんと生産・批判・消費され続ける教養言説の底に潜む悲喜劇的な欲望を、出版社との共犯関係・女性や階級とのかかわりなど、さまざまな側面から映しだす。知的マゾヒズムを刺激しつつ、一風変わった教養主義の復権を目指す、ちょっと意地悪で少しさわやかな教養論論。

目次

第1章 教養、あるいは「男の子いかに生くべきか」(教養死すとも;教養論をめぐる困難 ほか)
第2章 戦争、そして教養がよみがえる(学力低下を最初に嘆いた人物;教師は喜んでいるか ほか)
第3章 出版社、この教養の敵(教養のアント;いわゆる東大中沢事件 ほか)
第4章 女、教養と階級が交わる場所(禁句について;上野千鶴子なんか怖くない ほか)

著者等紹介

高田里恵子[タカダリエコ]
1958年神奈川県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。桃山学院大学教授。専門はドイツ文学・日本におけるドイツ文学研究の歴史
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

harass

50
日本の『教養論』について大量の引用を用いて論じる。アカデミズムについての本は個人的によく読んでいて、いろいろ腑に落ちるところが多い。この著者の本を数冊続けて読んでいて、独特な言い回しに慣れてきた。隠微な意地の悪さがあり、ニヤッとしながら読むのが癖になるのだが、論旨を要約するのは難しい。微妙な問題を単純化しないで物事を語ろうとしているせいだろう。何よりも、読んでいる自分にぐさりと刺さるところがある。この読書という行為についても。2016/02/13

はふ

16
「教養」には、男の教養と女の教養の二つに大別できた時代が、かつて存在した。男の教養は、いかにして生きていくかを問うもので、女の教養は、良い男と結婚して、自身の環境を変えるためのものであった。しかし、どちらの教養も、本書を読み進める上で、「目的」ではなく単なる「手段」としての、教養であったことが解き明かされていく。 現代ではどうだろうか。現代を生きる若者の読書率は格段に下がり、本から学びを得るという文化は衰退しつつある。すなわち、教養が必要でなくなりつつある時代だ。そのような現代で、私たちはどう生きるべきか2021/02/11

ネムル

15
良い意味で不快な教養論の本。例えば、学生が人文書を読むことに対して、「僕は単なる優等生じゃないと叫ぶための手段」などと露悪的に説明しておりーー著者近影がちょっと金井美恵子に似ていて余計そう感じるがーー竹内洋が立場上書けないところや女性の教養問題まで踏み込んでいる。また、全体を通して教養は本(自己本位で内省的な読書)によって成るのか、人(他者との建設的な関係)によって成るのか、日本の教養主義の二重構造が繰り返されるのは、教養を考えるに特に大事なことと思われる。2018/03/07

はふ

13
教養とはどんなものか、教養はどのような歴史を辿ってきたかを記された本。本書では主に戦前の日本から戦後にかけて、教養の成り立ちや変化を述べているが、現代と比べて変わらずあるものや反対に、失われてしまったものもある。時代の流れは残酷なもので、その時代に適しておらず不必要なものは消されていくように、社会はできている。教養も徐々に失われつつあものの一つだ。だが、教養は不必要なものだろうか。いつの時代でも変わらず、人の生を左右するもののはずだ。教養はなぜ必要なのかなど、教養というテーマについて本書は深く掘り下げる。2019/01/04

Sumichika3

13
出版の何年か前、この書名を予告するかの如きレポートを書いて提出したことがある。レポートで取り上げたのはオーストリア=ハンガリー(K.und.K)時代のガリツィア地方出身の某作家だが、論旨を強引に要約すれば、古典的な教養の修得を介する自己成型が、死物と化した権威の模倣による訓育を伴うものであり、その果てグロテスクかつ戯画的なフェティシズムに陥る過程のメカニズムを論じたものだった。高田先生が本書で取り上げる、庄司薫や最後の教養主義と評される所謂ニューアカの件りは、読みつつ、他人事とは思えず苦笑してしまった。

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/460230
  • ご注意事項