内容説明
警視庁vs元江戸南町奉行所の面々。広沢真臣、黒田清隆、井上馨、森鴎外、高橋お伝、皇女和宮、清水の次郎長などなど多彩な人物を巻き込む怪事件をめぐり知恵くらべは続く。華やかな明治の舞台うらに流れる去りゆくものたちの悲哀。
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
大正11(1922)年、兵庫県養父郡関宮町の医家に生れる。昭和24年、「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で第二回探偵作家クラブ賞を受賞。その後「甲賀忍法帖」を初めとする“風太郎忍法”を生みだし、忍法ブームをまきおこす。平成13(2001)年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
111
警視庁草紙の下巻です。川路と元江戸南町奉行者の人々の対決が相変わらず続きます。ただ実在の人物がかなり出てきて歴史好きの人にはかなり楽しめるのではないかと感じます。ニセ札事件は再度読もうと思っている北森鴻さんの「蜻蛉始末」と関連があるようです。また川路大警視と井上薫との確執などもあり、最後では「抜刀隊」の話が出てきて元幕臣も新政府の人物たちも関係なく戦場に出ていきます。最後まで楽しめました。2023/11/01
NAO
67
作者は奉行寄りだが、私には元町奉行の大人げのなさばかりが目についた。新しい世にかかわりたいのならば、もっと肯定的なかかわり方はできないのだろうか。もちろん、それは簡単なことではない。だからこそ、多くの共感を呼ぶのだ。でも、それも、やはり限度がある。最後に、腹心の手下千羽平四郎は、どんなに警官たちをからかって、その裏をかいてみたところで、それはただの悪あがきにしか過ぎないと悟り、警視庁の抜刀隊に入隊してしまう。これほど皮肉なことはないだろう。 2020/04/15
Yuji
24
お調子者の同心がラストで、敵の策略にはまりながら、西南戦争の警察抜刀隊の一員として行軍してゆく皮肉。日本が世界大戦に自ら巻き込まれ、参加してゆく暗澹たる歴史への予感、余韻。そこまでするのかという川路警視の密偵を使った謀略の暗さ。明治政府以降の流れは勿論、現在につづいており、まったく嫌になる。とはいえ物語は本当に面白い!2016/11/05
紅はこべ
24
新政府のためなら、大恩人西郷も陥れても構わないとする川路大警視の冷徹さの前には、温情派のご隠居は敗れ去るしかなかったのか。2009/05/02
河内 タッキー
19
山田浅右衛門の家業の話。それと絡む高橋お伝の悲哀。吉田松陰の遺書が世に出てきたいきさつ。藤田組贋札事件。井上馨と川路利良の対立。これらが著者の推理でみごとに絡み合い、震えるほどの展開。そして山田風太郎お得意の皮肉な結末が余韻を残す。もう天才というしかない。2019/05/11