出版社内容情報
「税務署長の冒険」「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」「セロ弾きのゴーシュ」「ポラーノの広場」「月夜のけだもの」他9篇収録。
【解説: 天沢退二郎 】
著者等紹介
宮沢賢治[ミヤザワケンジ]
1896年(明治29年)、岩手県花巻市に生まれ、1933年(昭和8年)、37歳で没。県立盛岡中学を経て、盛岡高等農林学校卒。幼い頃より宗教に親しみ、植物、鉱物採集にも熱中、また短歌も数多く作る。22歳頃初めての童話を書き、以後、創作と農業指導に献身。この二つの道は、賢治の短かい生涯を貫く、重要な柱となる。1924年(大正13年)『春と修羅』『注文の多い料理店』を出版する。これだけが生前刊行の本である。没後賢治の人格と芸術への評価は高まり、数多くの童話・詩集が刊行されることとなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
76
「銀河鉄道の夜」の初期稿(第1稿~第3稿)と最終稿(第4稿)を読了。長野まゆみさんの「カムパネルラ版~」を読んで興味が湧いたので初期稿を読んでみた。大きく違う箇所は終盤のジョバンニが一人になりある決意をした際の展開。セロのような声の主(ブルカニロ博士)がカムパネルラたちについて示唆し、さらに科学の歴史めいた話が説かれる。これは「本当の幸せ」を求めるための賢治としての心掛けの一つなのかもしれない。プレシオスの鎖を解くという表現が印象的。別稿とは言え4回も読んだことで頭の中が銀河の情景で満たされた。2019/10/01
優希
73
賢治の作品は感じる作品なのではないでしょうか。どの作品も考える文章ではなく、目の前に開ける世界なのです。特に神秘的なのは『銀河鉄道の夜』。きらめく星の中に現実が見える不思議さをみたようでした。第一稿から第四稿までおさめられているからかもしれません。他、『風の又三郎』『セロ弾きのゴーシュ』といった有名作もあり、賢治の名作選と言ってもいいと思います。2020/06/01
mii22.
65
【娘の本棚】銀河鉄道の夜、風の又三郎、セロ弾きのゴーシュといった賢治の代表作は既読。今回は娘のオススメで黒くてホラーな短編「まなづるとダァリア」その異稿「連れて行かれたダァリア」と「蛙のゴム靴」その異稿「蛙の消滅」と「或る農学生の日誌」その異稿「フランドン農学校の豚」を読了。初期形、先駆形にあたる異稿はかなり残酷で容赦なく、またきっぱりと物語が閉じている感じがする。正反対の展開になっているものもあり、賢治の創作時の心の変化に興味がわく。私のお気に入りは怖~い「連れて行かれたダァリア」2020/10/18
優希
44
賢治の作品は「感じる」作品だと思いました。どの作品も絵の前に開かれる映像のようなのです。特に『銀河鉄道の夜』は神秘的な空気を感じました。他にも『風の又三郎』や『セロ弾きのゴーシュ』といった代表作も収録されているので、賢治の名作選と言ってもいいですね。2022/08/17
井月 奎(いづき けい)
32
「銀河鉄道の夜」を読了。仏教に帰依して、自らの内に世界を、世界の広がりから自らの意味を見だす芸術家の宮沢賢治が見るキリスト教徒の殉教の旅です。賢治は本能的にフラクタル理論を感じていたのでしょう。部分が全体を表すことを。川を天の川に、砂を星に見立てた銀河旅行はジョバンニにカンパネルラとの別れの時間を与えます。二人の切符が違うのはこの世で責任を果たすものと、そうではないものの違いであり、星座を行き来しつつ世界は二人に死を受け入れるような工夫をします。旅立つカンパネルラにそれが届いていると願い頁を閉じましょう。2016/02/13