出版社内容情報
日本映画の黄金期に国民的な人気を集めた京マチ子。強烈な肉体で旧弊な道徳を破壊したかと思えば古典的で淑やかな女性を演じてみせた。魅力の全てを語り尽くす!
内容説明
美と破壊性をあわせ持つ無二の女優、京マチ子。映画デビュー後、瞬く間にスターの座に上り詰め、日本映画の黄金期を駆け抜けた。出演作は一〇〇本に上り、強烈な肉体美で旧弊な道徳を破壊したかと思えば、古典的で淑やかな日本女性を演じてみせた。彼女の主演作が海外の名だたる映画祭で高く評価されたのはなぜか?戦後、多くの日本人に熱烈に支持されたのはなぜか?ヴァンプから醜女、喜劇からシリアスな役まで、多彩な役を変幻自在に演じた女優・京マチ子の魅力を語り尽くす。
目次
序章 京マチ子の誕生前夜
第1章 肉体派ヴァンプ女優の躍進
第2章 国際派グランプリ女優へ
第3章 真実の京マチ子―銀幕を離れて
第4章 躍動するパフォーマンス―文芸映画の京マチ子
第5章 “政治化”する国民女優―国境を越える恋愛メロドラマ
第6章 “変身”する演技派女優―顔の七変化
第7章 闘う女―看板女優の共演/競演
終章 千変万化する映画女優
著者等紹介
北村匡平[キタムラキョウヘイ]
1982年生まれ。現在、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。映画研究/批評・表象文化論・歴史社会学・メディア論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
62
ストイックなまでの変幻自在ぶりは女優というよりも職人。スタァが大勢いた時代にあって、替えがきかない存在。未見の作品がまだまだ沢山ある。今後ゆっくり観ていけたらと思う。京マチ子氏を偲んで。2019/05/24
gtn
30
肉体派女優と謳われた彼女だが、素顔は古風で愚直、恋愛や私生活の楽しみを二の次にし、ただただ役作りに没頭していたという。結果、海外が求めるオリエンタリズムにも、商業映画に必要な娯楽性にも自在に応じることができた。ただ、自然と醸し出される艶っぽさに、本人自身気付いていない節がある。彼女を大女優の一人たらしめたのも、そのギャップ故か。2021/05/02
かふ
19
京マチ子映画祭に合わせて購入。京マチ子の魅力を語り尽くす良きガイド本。日本の4大監督(溝口、小津、黒澤、成瀬)の映画に出演しているだけでなく、監督の重要作にもなっている。他にも市川崑や増村保造監督作品もある戦後を代表するスター女優。京マチ子の活躍をデヴューからの肉体派ヴァンプ女優、国際映画賞グランプリ女優、国民派の七変化女優というそれぞれの時代の魅力を語っている。ぜひ映画と一緒に。2019/03/11
しゅん
18
京マチ子のイメージは①肉体のボリュームを誇示して戦後の焼け跡のエネルギーを象徴する「ヴァンプ女優」②『羅生門』『雨月物語』などの国際的映画でみせる、日本的な美としての「静の女優」③醜女から美女、幼女から老女、コメディからメロドラマまでを演じる「変幻自在の女優」に分けられる。①から③へと移る変遷を追いながら、映画女優が国民的象徴性を背負った時代としての1940年代~50年代を素描した一冊。映画会社が海外に日本映画を売り込むときの姿が描かれてて、オリエンタリズムを自ら強調していたのを興味深く読む。2022/10/16
K
3
著者の『スター女優の文化社会学』が面白かったので、その中でも京マチ子さんに焦点を絞ったこちらも読んでみた。森雅之さんに興味があった学生時代に何本か出演作を見ていて存じ上げていました。当時の社会背景として、豊満さと奔放さを表現できる女優として時代に求められるようにして台頭してから、大和撫子、女の激しい情念…と様々なテーマを体現できる大女優さんだったんだなと感じさせられます。2020/11/15