感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きさらぎ
3
全体を貫くのは、「身を用無き者と思いなした」業平を評した「頽廃において美しく、無頼において倫理的であるというイロニイ」という言葉だろうか。業平から近現代まで様々な「無用者」が登場するが、空也や芭蕉のように一切を捨てて一を貫いた者から、「ああでもない、こうでもないと洒落のめした挙句に本を忘れた」ニヒリズム(寸前)の徒までが縦横に語られる。筆者は「あとがき」で、「無用者は禅に至って本物となるが、今の自分にはそれを書く力は無い」と言う。捨てて求める、その二つを備えてこそ真の「無用者」たりうる、といことだろうか。2015/03/20