内容説明
本書の目的は、人間性(人間の本性)の研究である。自分自身のものとなっているさまざまなタイプの経験、すなわち、著者が教師や、臨床経験から学んだことを統合して、人間性に関する意見を表明しようと思ったのである。この方法を採ることによって、限界がないはずのテーマについて、パーソナルな、しかし当然のことながら、きわめて限定された記述が達成できるかもしれない。医者としては、病気について書く方がずっと簡単であり、またずっと普通のことである。しかし、健康とは相対的にみて病気がない状態であるとする医者の仮定では不十分だろう。健康という言葉にはもっと肯定的な固有の意味があるのに対して、病気でないということは健康な生活の出発点にすぎないのである。本書の読者としては、力動的な心理学の文献をある程度読んでおり、仕事においても実生活においても、個人的な経験を積んでいると見なすことができる大学院の学生を想定している。
目次
第1部 人間の子どもの検討:身体、精神、心(精神‐身体と心;不健康 ほか)
第2部 人間の情緒発達(対人関係;本能論からみた健康の概念 ほか)
第3部 一つの単位としての確立(幼児期に特徴的な情緒発達;抑うつポジション ほか)
第4部 本能論から自我論へ(原初的な情緒発達;外界の現実との関係の確立 ほか)
著者等紹介
牛島定信[ウシジマサダノブ]
1939年福岡県に生まれる。1963年九州大学医学部卒業。専攻は精神医学・精神分析学。現在、東京慈恵会医科大学医学部教授
館直彦[タチナオヒコ]
1953年東京都に生まれる。1981年大阪大学医学部卒業。専攻は精神医学・精神分析学。現在、聖徳大学人文学部教授
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