出版社内容情報
◇ 解 説 ◇
人は、自己を脅かすような強烈なトラウマを体験すると、生きていくためにその記憶を無意識へと追いやってしまうという。それが「抑圧された記憶」である。しかし、実際にはなかった「性的虐待」「トラウマ」の記憶が暗示や誘導によって作られ、その「記憶」にもとづいて、虐待のかどで親が訴えられ、家庭崩壊の悲劇が起こっているとしたら・・・。本書は、記憶の不思議さと恐ろしさが胸に迫るノンフィクションである。
◇ 目 次 ◇
1 夢の成分
2 不思議な時代
3 失 神
4 遊離した霊
5 神の顎髭・悪魔の角
6 事実でない真実
7 ショッピングセンターの迷子
8 破壊された家族
9 記憶を掘り起こす
10 私が欲しかったもの
11 棒と石
12 悪魔を追い出す
13 天国と地獄の問題
◇ 著 者 ◇
Elizabeth Loftus|記憶の研究を専門とする認知心理学者。ワシントン大学教授。数百もの裁判で、専門家として証言している。著書に『目撃者の証言』(西本武彦訳/小社刊)・『目撃証言』(K.ケッチャム共著/岩波書店刊)
◇ 訳 者 ◇
なかまきこ|千葉大学助教授をへて、現在、都立大学助教授。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yurari
2
人の記憶とは、こんなに簡単に捏造されるのかと恐ろしくなった。暗示や期待によって記憶の種が蒔かれると、発芽しどんどん育ってしまう。カウンセラーの仕事は事実を追求するのではなく意味を探し出し、クライエントが責任ある存在として生きていけるように助けを提供すること。クライエントは外傷的な記憶を持つことでカウンセラーに特別な存在と認めてもらえると感じることがあるが、そう思わせてはならない。初歩的なことかもしれないが、カウンセリングの結果は第三者が読んでもわかるよう、客観的な内容で丁寧に記録すべき。2021/08/20
新橋九段
2
記憶にない虐待の容疑で責められ尋問される様は下手なホラーよりも恐ろしい。カウンセラーが善意に突き動かされているのが余計にたちが悪いのだろう。著者の苦悩が垣間見える。2014/12/12
石臼
2
外部からの誘導や暗示によって、人はいとも容易く架空の記憶を捏造してしまう。そこらのホラー小説よりもよっぽど怖ろしい話。自分がこうなってしまうことを防ぐためには、まず何よりも人間の記憶が酷く不確かであることを知っておくことが重要なのだろう。2014/09/29
うにこ。
2
いやあ…胸糞悪くなる本ですね! 勿論作者にじゃなくて事例として挙げられている事件たちに対してですが! 被害者はつらい精神状態から救われたい一心でカウンセラーに縋り、そそのかすカウンセラーの方にも悪意はなく、あるのはただ「患者さんを救いたい」という善意のみ。 ああ、あと勧善懲悪的な世界観というか、善と悪の二元論的な意識というかもあるかな。そういうものに凝り固まった人が暴走した果ての、現代の魔女狩り。やってるカウンセリングは、見事に洗脳のための手段。心理学とか尋問法とかに興味のある人にもお勧めです。2013/01/10
メロン泥棒
2
本当に恐ろしい本。心理学に基づきあらゆる問題が幼少時の性的虐待に結びつけられ、実際に無かった虐待の記憶がカウンセリングによって植え付けられ、自白に基づき犯罪者と認定される。その仮定が詳細に語られ分析されている。自白に基づく冤罪と全く同じ構図だが、それが心理学という「科学」に基づき、「女性の権利向上」という政治に後押しされることにより猛威を振るう。元々は心理学の本だが、冤罪問題に興味がある人も必読かと思われる。2010/08/11