内容説明
現実生活はみじめなものだった。恋人も去り、大学も行かず、金はない。だが〔夢〕だけはよく見た。そこでは鬼の顔をした老婆「よもつしこめ」が囁くのだ。「物心がつくと世界は一つしか見えなくなる」と。そうだ、子供の時、僕は確かに二つの月を見た。あれははたして現実だったのか?現代人が忘れてしまった、無垢な子供が感じる〔もう一つの世界〕を描く、奇想ホラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
135
ホラー作家・小林泰三さんが祥伝社文庫創刊十五周年記念に著した特別書き下ろし中編小説。ああ、不覚にも私はお名前の読みを「たいぞう」さんだと思い込んでいましたが実は「やすみ」さんだと初めて知りました。日本語は本当にややこしいですね。それから著者のお写真を拝見して普通のイケメン男性である事にも(ホラー作家のイメージとの落差に)驚きましたね。この男・藤森直人(竹中じゃなく)は「男おいどん」みたいな環境で暮らす怠惰な野郎で世の若者は反面教師とすべきでしょう。彼は現世よりも2つの月がある異世界で幸せを探すべきですね。2019/06/04
眠る山猫屋
53
家の書架にひっそりと眠っていた一冊。いったい誰が購入したのだろう?家人の誰も読みそうにないのに・・・ここまでは実話(苦笑) さて、内容は・・・どうにも救いようがない直人が主人公。なんというか、ちょっとボタンをかけ違えただけなのに、自意識の高さと認識の甘さが彼を奈落の底へと誘う。全く笑えない。何なれば今の自分と差して変わらないのではないか、と思うから。人として自堕落に堕ちていく直人は、幻視した“もうひとつの記憶”へ縋る。彼が願ったもうひとつの世界は・・・やっぱり地獄でしかなかった。2022/04/25
たいぱぱ
6
息子が、読書感想文用(笑)に図書館から借りてくるも断念。転がっていたので読んでみた。全然面白くない!2012/08/20
のの
5
『記憶破断者』に出てきた田村二吉についてもっと知りたくて読みました。二吉が主人公ってわけじゃないけど、二吉が出てくるだけでワクワクしました。内容はまさに"記憶"ではなく"奇憶"でした。シュゴス2号に照らされる世界で直人はどんな人生を送るのだろう。2017/06/10
miho
5
おどろおどろしくも物悲しい感じ、動物の死体が浮かぶドブ川とかは日野日出志の絵が浮かんできそうになる。パラレルワールドより、主人公の転落していくさまがリアルで怖い。2015/05/10