出版社内容情報
彩瀬 まる[アヤセ マル]
著・文・その他
内容説明
虎治と光は元同級生。夫婦になり子供を持ち家族になった。言葉と体と時間を重ね、時にはぶつかりながらも同じ方向を見て進んでいると、それが夫婦だと思っていた。けれど―。息子が自分のことを「弱い」と言った時の違和感。息子がスイミングをやめると決めた時に虎治が言った「逃げるのか」という言葉への嫌悪感。新しい仕事への挑戦を夫を理由に漫然と諦めたことへの後悔。かつての仕事仲間の成功を妬む自分への苛立ち…。
著者等紹介
彩瀬まる[アヤセマル]
1986年千葉県生まれ。上智大学文学部卒業。2010年「花に眩む」で第九回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。17年『くちなし』で直木賞候補。18年、同作で第五回高校生直木賞受賞。21年『新しい星』が直木賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
384
彩瀬 まるは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 十代の出会いから70歳代の死別までの夫婦の物語、気持ちが変わるのは当然で半世紀以上夫婦が持つだけで偉い気がします。エピソードを駆け足で綴っているので、もう少しボリュームがあった方が良い気がします。 https://www.gentosha.co.jp/book/b14571.html2022/10/07
fwhd8325
258
ある程度の年齢の読者は、この物語に自身を重ねているのだろうと思います。とても力強く、そして繊細な物語でした。人は後悔の連続の中で成長していくものなのだろうか。捉え方は性別によって異なるのだろうけど、どっか根っこでは通じているようにも感じさせてくれます。他人にかんむりが見えるように、誰かが自分にかんむりがあることを見ているように思います。2023/01/11
のぶ
254
夫婦のひとつの愛の物語だった。本作に登場するのは加々見虎治と光の夫婦。二人は元同級生で、間には新という子どもがいる。前半部は子育てに関わる平凡な毎日が描かれていて、子どものスイミングスクールやら、何気ない描写が続き、この前半部はやや退屈に感じた。後半に入り、話は夫婦の問題が前面に出てくる。白か黒か、とはっきり選択できないことや、する勇気が出ないこと、後悔しそうなこと、既に後悔していること、そんなひきつれた気持ちに襲われる瞬間が山ほどある。ラストの部分は書かないが、一つの生き方を提示してもらったようだ。2022/09/26
いつでも母さん
227
『ああ、彼は二人でたくさん散らかした欠片をなるべくきれいにスーツケースにしまおうとしている。話し合ってなにかを変えようとする時間の終わりがとうとう来た。』一番すんなり受け入れられた感情がここだった。ある夫婦・虎治と光の話。夫との付き合いが生涯において一番長く深いと思う私にも、頭のどこか・・心の何処かで確認してしまう感情がある。敢えて口にしなかった言葉たち。今更目の前にさらけ出したりはしない。これは私の中だけのことなのだ(いや、夫も同じだったりして)そして、それは案外と面白い揺れだったりもするのだ。2022/10/09
とろとろ
200
妻が語りとなって、夫の馴れ初めと息子の独り立ち、やがて死に至るまでの淡々とした話。読み終わってから、で、なんの話だったのだろうかとあれこれ考えてみたのだが、なんだかよく判らない。自分が自分で良いと思えば誰が何と言おうと良いのだ、ということかしら。自分のかんむりをもつと言うことは、意味通りに冠をかぶっているのは自分なのだから自分のことを判っていればそれでいい、人生何が起ころうとも胸を張って生きていければいいと…?。哲学的な人生論みたいな話だったのかしら。「それでいいのだぁ♪、ぼんぼんバカボンバカぼんぼん」。2023/03/24