感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
51
アイヒェンドルフの作品集。魔的で根源的でもある「天への憧憬」と「現世の生の美」の間の葛藤を描いたような作品が並びます。本書では、それは妖しく異教的な美女と善良で可憐な美少女に仮託されがちなのですが、『大理石像』や『航海』では同じ姿をとるように両者は表裏一体のものでもあるように思います。また魔的な美に伴う庭園が古い時のうわ言のようでもあるように、「静かな神の国」は遥かな憧れであると同時に呪縛されとり残された遠い昔の夢でもあって、「私たち自身の「魂の情景」」を覗き込むような美しくも恐ろしい体験を楽しみました。2024/05/14
てれまこし
8
アイヒェンドルフに至ると自らを信じないメルヒェンという性格はさらに強まる。空想上の中世が舞台なんであるが、メルヒェンの世界はさらにその向こうにあって、登場人物たちはむしろぼくらの側にいる。メルヒェンの世界は夜の闇のように魅力的でありながら麻薬のように危険なものとして描かれる。非日常への憧れが魔性の女、異教のみだらな神ヴィーナスへの恋として表象される。戦慄するほど美しくときに純真無垢でときにまがまがしいほどに魅惑的。男は現世と恋の間で揺れる。今日のマンガやアニメの女性キャラの原型はどうもここら辺に見出せる。2020/10/30
-
- 和書
- 地球環境学事典