内容説明
「忠臣蔵」や「阿部一族」を歴史的事実によって検証しつつ、殉死が忠誠心の現れであったという通説を覆す、スリリングな日本文化論。
目次
プロローグ 殉死と忠誠心
1 阿部一族の悲劇
2 情死としての殉死
3 細川忠利の殉死者
4 細川忠興と光尚の殉死者
5 伊達政宗の殉死者
6 下層の殉死者たち
7 殉死者とかぶき者
8 「忠臣蔵」の本質
9 武士道の成立事情
エピローグ 殉死解釈にみる死生観の転換
感想・レビュー
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katashin86
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鴎外「阿部一族」が実際には史実を大きく外れるというところから始まるこの本。殉死という異常行動の理由が衆道=同性愛など、ときに些細なかかわりを淵源とする主君への恩義・一体感であり、それは非合理な「奴」気質、「かぶき者」の反体制行動であるものの、その非合理性こそ「死」を前提とする忠誠心の根拠であるとする。 その後武士の忠誠心の根拠として成立した「武士道」が理性的であるものの内面的基盤を欠く、世間への処世術であるという。江戸時代における日本人の忠誠観念の大転換を明快に論じた快著。2020/12/28