出版社内容情報
アリストテレスの試みは、法の規範性の根源を「個々人の価値」に遡らせることにあった――「個人の尊厳」「自由の尊重」を法理論上の根本原則に据えた西欧法を明治期に輸入した日本では、いまだ法解釈をおこなう上で西欧との共通理解が得られていないことも少なくない。本書は、比較法学の視点から、日本における法律学を西欧精神のより深い理解に立って考える手がかりとして、西欧法学の心髄をなしているアリストテレスに着目する。すなわち、その著書「ニコマコス倫理学」第5巻の記述に従い、かれが説く「正義」の概念を明らかにすることにより、
目次
序章 本書の趣旨
第1章 アリストテレスの正義論の基底
1 アリストテレスにおける学問の方法
時世の渦の中で/論理の力/知の探求
2 動的世界の根底
動の世界/動の根源
3 実践行為の考察
倫理学の出発点/生活哲学としての幸福論/『ニコマコス倫理学』
と正義論
第2章 アリストテレスの正義論の主軸
1 アリストテレスの正義論の考察に臨んで
正義論の社会制度的背景/正義論の構図/普遍的正義と特殊的正義
2 配分的正義
特殊的正義における二種類/配分的正義の観念/配分的正義の意義
3 矯正適正義
矯正適正義の観念/矯正適正義の対象/矯正適正義における中庸
第3章 アリストテレスによる個別的問題の考察
1 交換的正義
交換的正義の観念/交換的正義の機能
2 政治的正義
政治的正義の輪郭/政治的正義における人為法的正義と自然法的正義
3 正義と行為主体
行為とその当事者主体/法の適用における正と不正/成文法の適用
における適切さ
結語 西欧法の心髄を求めて
1 ”個人”の視座からの法構築
2 ”個人と個人の間の絆”としての法
3 ”生きた規範”を求めて
あとがき
主要参考文献
索引
内容説明
本書は、「アリストテレス」の正義論を考察することにより、究極的には、西欧法の特質を明らかにしようとするものである。アリストテレスの正義論は、わが国においては、その全体像が紹介されるには至っていない。本書は、その正義論が西欧法の基底をなすものであるとの視点から、その心髄を、当時の思想的社会的状況を踏まえつつ解明しようとするものである。
目次
第1章 アリストテレスの正義論の基底(アリストテレスにおける学問の方法;動的世界の根底;実践行為への考察)
第2章 アリストテレスの正義論の主軸(アリストテレスの正義論の考察に臨んで;配分的正義;矯正的正義)
第3章 アリストテレスによる個別的問題の考察(交換的正義;政治的正義;正義と行為主体)
結語 西欧法の心髄を求めて(“個人”の視座からの法構築;“個人と個人の間の絆”としての法;“生きた規範”を求めて)