出版社内容情報
クリステヴァ,イリガライと並び称される,フランス・フェミニズムの代表であるシクスーの主要論文を編訳した。作家でもある著者は,豊かなイメージと魅力的な暗喩に満ちた文章で,既存社会における男根論理中心主義を告発していく。男女の性を超えた,新しい人間の可能性を高らかにうたいあげるシクスーのメッセージは,日本の読者にも希望を与えるだろう。
内容説明
「女性的エクリチュール」が拓く、新しい人間像とは?クリステヴァ、イリガライと並ぶフランス・フェミニズムの高峰。
目次
メデューサの笑い
去勢か斬首か
エレーヌ・シクスーに対するいくつかの質問
新しく生まれた女
エクリチュールへの到達
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nranjen
4
開架の本は貸し出し期間が短く過ぎると罰則が厳しくて泣けてくる。大急ぎで読んだ。全部私費でよいのでコピーしようかと思ったほど気に入った本。フロイト・ラカンラインのどうしても納得いかない理論を徹底的に叩いてくれていて痛快だった。息子の母としては認められても娘の母としては認められないという恐らく何も感じないひとには感じられないであろう訴えにも気づくことができた女性のエクリチュールの必要性がこの本ではじめて理解できた。語るのではなく書くこと。男性性と違う女性性が文体を支えるすべてから発散されている。訳もすばらしい2019/05/09
ヒナコ
0
シクスーの中心的に関心はフロイトの言うところのエスの評価にある。言葉にされる前の感情。理性で表象されない狂気。解釈不能の記号。シクスーのエスに対する期待はラカンの象徴界を支える「父の法」の外側へ向かう冒険である。おしゃべりな軍隊の女将軍が軍令を理解できずに斬首される場面、泥棒が私有財産の配置を変更する場面、彼女の比喩はいずれも権力の前に逸脱者、つまりエスの余剰が存在することを願っている。ただし、意地悪く読むとすれば、彼女の理論は逸脱者があらかじめ女であると期待することを必ずしも保証はしてくれない。2016/12/07
なめこ
0
エクリチュールと/の女性性。かなり難解。興味をもって読んだけれど、女性性と男性性が二元的に前提されていることに最後まで違和感をぬぐえなかった。そのうち読みなおしたい。2016/04/28
marinefrancaise
0
学生の時のテキスト。当時は感激して涙したけれど、今読むと難解でよくわからない。
×
0
「で、どうしてあなたは書かないの?書きなさい!」エクリチュール・フェミニンを提唱する、いわばそのマニュフェストのようなテクスト。「女性たち」に語りかけながら「女性」「男性」「母」についても言及しているのだが、脱構築系の哲学者であるシクスーのそれを一般的な女性や男性に当てはめて読んではいけない。このことを念頭に置きつつも、どこかで日々に溶け込む女性・男性そして母の概念にとらわれてしまう自分に気がつく。翻訳が綺麗なためにむしろ上滑りしてしまう焦りなどを感じつつ講読した。次に読む際は意味を捉えることに集中したい2020/08/12