内容説明
六月、会津城下に輪王寺宮公現法親王が到着。しかし、西軍に奪われた白河口奪回は膠着状態にあった。西軍側は伊地知正治と共同で指揮をとるため土佐の板垣退助が加わった。奥羽越列藩同盟軍による白河の小峰城奪回の総攻撃は八回とも失敗。長岡城を奪還したものの、負傷した越後の蒼龍・河井継之助は斃れ、秋田久保田藩が西軍側に寝返り、三春藩も裏切った。奥羽越列藩同盟の瓦解が始まった。
著者等紹介
船戸与一[フナドヨイチ]
1944年山口県生まれ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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姉勤
31
裏切り、寝返り、サボタージュ。錦旗を翻す西軍の巧妙緻密な兵略に、しきたり、しがらみ、そして正義は我にあると言う空想に、劣勢に追いやられる奥羽越藩同盟。同盟藩は次々と離反し、愚かにもその制裁に兵を割くという自滅に進むのも、それも西軍の計略のうちか。唯一の鬼謀と言える河合継之助の孤軍奮闘も、物理と物量には勝てず、会津への合流の半ばにして斃れる。英雄の視点で描かれない戊辰戦争。騙され、奪われ、焼かれ、殺される領民。連想される現ウクライナの戦場と、未来の日本を思わせる国民当事者意識の欠如、悲劇の招来は当然と。2023/03/09
Akihiro Nishio
26
弱兵、無能指揮官の奥羽越列藩連合の中で一人奮闘していた河井継之助を巻末に失い、西軍は一気に会津に迫る。勤王と佐幕で藩論を割ったり、勝ち馬に乗りたい者を離反させたりと、西軍は間諜を使っていくらでも工作できるのに対し、奥州は薩長の仲違いに期待を寄せるしかできない。しかし、薩長が藩論を1つに纏めるためには、自ら血を流して西洋諸国と戦ったのである。故に、その精強さを見せつけるためには、奥州という生贄が必要だったのだろう。奥州としては随所で、分岐点があったように見えるが、結局どうにもならなかったのではないか。2017/10/09
きょちょ
22
奥羽越同盟、もともと徳川家に恨みを持っていた秋田久保田藩がすぐ離脱。そうなると、陸を北上してくる西軍を食い止めるだけでなく、秋田久保田藩もやっつけなければならなくなって、庄内・仙台藩などはそちらに向かうことになる。さんざん脅されていた新発田藩もすぐ離脱、これにより長岡、さらに武器供給の要、新潟も制圧される。長岡のキーマンも死に、戦略に秀でた人間がいなくなる。会津の周辺もどんどん離脱、会津は孤立。頼みは、榎本軍艦だが、会津は海から遠いのだ・・・。 もはや会津はこれまで・・・あぁ、悲しや・・・。 ★★★★★2021/08/29
ちゃま坊
14
河井継之助、長岡城奪回するも無念。しかも列藩同盟軍に裏切りが。弱者に同情がわく。長岡市の地図を眺めていたら、山本五十六記念館というのを見つけた。明治維新で賊軍となった地から太平洋戦争の英雄が出ているのか。「満州国演義」を思い出す。寅蔵が何度も目撃した雨の夜空の月は「雨月」のタイトルになっているが、いったい何を意味するのか。2018/07/01
眠る山猫屋
13
親の仇には、いまだ巡り会えず。戊辰戦争は次第に混迷を極め、人間の醜さ弱さばかりが目に留まる。奥羽列藩同盟での裏切りをこれでもかというほど見せつけられると、その土地の方々まで嫌いになりそう(苦笑) 蒼龍も堕ち、スネル兄弟も捕まった。会津は包囲され榎本は遅刻中。史実をなぞっているだけに、大局は知っているけれど、寅蔵ほか、今作品で足掻く人々の行く末は、やはり誰一人として生き残らないのだろうか。2013/12/03